副社長 友山 茂樹
副社長 友山 茂樹

クルマが、社会に「移動」というサービスを提供するプラットフォームになっていく、いわゆる、MaaS(Mobility as a Service)という事業領域が拡大するなか、トヨタは、2016年末に「コネクティッド戦略」を発表し、MaaSへの取り組みを加速させています。

コネクティッド戦略

コネクティッド戦略は、「すべてのクルマをコネクティッド化」「ビッグデータの活用」「新たなモビリティサービスの創出」という3本の矢からなります。ここで重要な情報インフラが、MSPF(Mobility Service Platform)です。コネクティッドカーとの接点となるクラウド、そこに蓄積される車両情報は、MSPFにより、トヨタが責任を持って、安全、かつ、セキュアに管理します。一方、サービスを提供する企業、例えば、ライドシェアやカーシェア事業者、また、保険会社などは、このMSPFを介して、トヨタやレクサスの車両情報と連携したサービスを提供できます。コネクティッドにより、トヨタは、カーカンパニーから、モビリティカンパニー、つまり、移動と言う価値そのもの、またその周辺サービスを、社会に提供する企業へと変革し、モビリティサービス・プラットフォーマーとしての新たな成長をめざしていきます。

コネクティッド戦略を支える情報インフラMSPF

コネクティッド戦略の3つの顔

コネクティッド戦略の3つの顔

コネクティッド戦略には、「守り」「改善」「攻め」の3つの顔があります。「守り」とは、顧客との長期的な信頼関係を確立し、既存のバリューチェーンを維持・拡大すること、「改善」とは、従来の仕事のやり方を変革し、品質やリードタイム、生産性を飛躍的に改善すること、「攻め」とは、車の新たな価値、新たなモビリティ事業を創出することです。

コネクティッドによる「守り」の主な施策としては、eケアサービスやヘルスチェックサービスがあり、車両データに基づいて、販売店やコールセンターから、タイムリーなアフターサービスが提供されます。お客様に安心のカーライフをお届けする一方で、販売店におけるサービス入庫増、ひいては、トヨタ・レクサス車への代替継続につなげます。

コネクティッドによる「改善」の主な施策としては、車両データに基づくEDER(Early Detectionand Early Resolution)があります。車両データを常時収集することにより、市場不具合を早期に把握でき、かつ、市場処置の迅速化・効率化につながります。また、OTA(Over The Air)によるソフトウエアの更新で車両のソフトウエアのバージョンを常に最新に維持することが可能となります。

コネクティッドによる「攻め」の施策としては、車の新価値創出と、新たなモビリティ事業の創出に区分されます。車の新価値創出として、代表的な機能は、エージェントです。これは、いわゆる、クラウド型のAIアシスタントであり、クルマが、ユーザーと対話し、ユーザーと心を通わせる存在になるというものです。現在は、ナビなどの操作を自然対話で行えるエージェント1.0が実用化されていますが、将来、さらに高度化したエージェント2.0が導入される予定です。新たなモビリティ事業の創出は、まさに、MaaSに代表されるように、カーカンパニーからモビリティカンパニーとしての新たな成長をめざす領域です。

MaaS戦略のアプローチ

MaaS戦略における2つのアプローチ

トヨタのMaaS戦略には、以下の2つのアプローチがあります。

  1. Uber社、Grab社、DiDi社など、地域の有力なMaaS事業者と提携する
  2. トヨタ自動車、トヨタ販売店が、MaaSの事業主体となる

どのアプローチで進めるかは、地域や状況によって異なりますが、いずれにおいても、トヨタ車の適用を拡大することはもちろん、そのメンテナンス、保険、リースといったバリューチェーンを確保することも重視しています。さらに将来、それが自動運転ライドシェアサービスに進化する際には、その車両やメンテナンスなどを一貫して提供し得る、モビリティプラットフォーマーになることをめざしています。

モビリティサービスについて、詳しくはこちら

MaaS車両の将来ラインアップ

MaaSを推進するにあたり、ライドシェア/カーシェアに適用される車両は、現在は、既存の乗用車が流用されていますが、将来は、その特性に合わせた、MaaS向け専用車が必要になると考えており、トヨタは、3種のラインアップで対応する計画です。2018年のCESで発表したe-Paletteに加えて、中型のラインアップとしてシエナベースの車両、さらに小型のEVベースの車両を開発しています。トヨタは、これらMaaS車両の延長に、将来の自動運転モビリティサービス、Autono-MaaSがあると考えています。

Autono-MaaS
Autonomous Vehicle(自動運転車)をMaaSに適用したモビリティサービスを示す造語。
MaaS向け車両

Autono-MaaS実現に向けて

Autono-MaaSで使用する自動運転車両は、ベースとなるレベル2、レベル3の量産車両にADS(Automated Driving System)を搭載すると、レベル4のMaaS専用車両になる、というコンセプトのもとに開発を進めています。ADSの自動運転ソフトは、第三者が提供する場合もありますが、車両側に搭載されているトヨタのガーディアンシステムが、周辺状況を二重で監視することで、車両の総合的な安全性を高めることをめざしています。また、ADSと車両間のインターフェース、VCI(Vehicle Control Interface)を標準化し、かつ、ガーディアンを含む制御ユニットを汎用化することで、安全かつリーズナブルなAutono-MaaSの実現をめざしています。

ガーディアン(高度安全運転支援)について、詳しくはこちら

Autono-MaaSで使用する自動運転車両

MaaSとTPS

ライドシェア/カーシェアに用いられる車両は、個人所有の車両の何倍も稼働率が高く、その分、高頻度のメンテナンスが要求されます。メンテナンスによる車両のダウンタイムを短く、かつ、それに要するコストを低減するために、トヨタ生産方式(TPS)の考え方が導入されています。例えば、Grab社へ提供している、ライドシェア車両向けトータルケアサービスにおいては、TPSの改善を駆使した集中サービスストール、ICS(Intensive Care Stall)をトヨタ販売店に導入し、メンテナンス時間の短縮と作業品質の向上を図っています。

今後、MaaSにおいては、それに最適な車両やソフトウエアの開発はもとより、メンテナンスや清掃など付随するオペレーションの生産性、品質を向上させることも重要であり、TPSの導入は、それを実現する上で重要な要素となりつつあります。

リアルの技術と資産を“強み”に…

リアルのノウハウと技術 : ICS

IT企業をはじめ、さまざまな業種が、MaaS事業に進出しつつありますが、単に、ITやAIを駆使することが、安全かつ、利便なモビリティ社会の創造につながる訳ではありません。クルマは、それ自体も、高度なハードウエアとソフトウエアの集合体であり、人の命をお預かりする乗り物です。そのようなクルマを、適正な品質とコストで量産し、タイムリーにメンテナンスし、安全かつリーズナブルな移動サービスとして社会に普及させるには、トヨタがこれまで培って来たTPSをはじめとするリアルのノウハウと技術、また、サービスネットワークを含むリアルの資産を最大限に活用していかなければなりません。先端技術の開発に合わせて、従来の自動車ビジネスの品質と生産性をより研ぎ澄ませ、新たなビジネスの可能性と融合させていくことが、今後の課題といえます。

トヨタは、コネクティッドとMaaSで、誰もが自由で、安全快適なモビリティ社会の実現をめざしていきます。

2019年12月
副社長 友山 茂樹