1999年09月03日

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トヨタ、水性塗料の新塗装技術を開発

 

 トヨタ自動車(株)<以下、トヨタ>は、環境への負荷の少ない水性塗料を使う新しい自動車塗装技術を開発し、このほど導入を開始した。

 今回の新塗装技術は、カートリッジタイプの塗料タンクを塗装ロボットに取付けた新型塗装機の開発により、環境負荷の少ない水性塗料で、塗布効率に優れ生産性の高い静電塗装を可能としたことが画期的である。新型塗装機の採用により塗布効率を向上するとともに、頻繁な塗色変更を迅速にでき、あわせて塗色変更時に塗装機内を洗浄するための洗浄用シンナー使用量を従来の約1/10に低減できる点にも特長がある。

 自動車のボディ塗装は、一般的なメタリック塗装の場合、下塗り、中塗り、ベースコート、クリアコートの四層で構成されているが、この内下塗りを除く塗装の塗料の溶媒には、粘度制御の自由度の確保あるいは静電塗装に必要な静電気の帯電が容易なところから、長年にわたり主として有機溶剤が使用されてきた。しかし、有機溶剤は気化成分および廃液残存成分が環境に負荷を与えるため、トヨタでは塗料使用効率向上や洗浄用シンナーの回収など従来から積極的に溶剤排出量の抑制を図ってきており、既に塗装ラインでの溶剤排出量VOC(注)を64g/m2まで低減しているが、さらに環境負荷のより少ない水を主溶媒とする水性塗料の塗装技術開発を進めていた。
 水性塗料は、粘度制御が難しいため塗装時の温度・湿度など作業環境の変化による塗装品質のばらつきが発生しやすく作業性に劣るとともに、塗料塗布効率を高める静電塗装がしづらいといったデメリットがあった。今回、従来よりも生産性が高く作業環境の変化に影響されにくい水性メタリックベース塗料を開発するとともに、カートリッジタイプの小型塗料タンクを塗装ロボットに取付け、塗料に直接静電気を発生させることを可能とし、塗布効率を飛躍的に向上させる新型塗装機を開発したことで、量産ラインでの水性塗料採用が可能となった。この水性塗料を溶剤排出量の最も多いベースコートに採用することにより、水性塗料を採用した塗装ラインでのVOCは35g/m2となり、国際的にもトップレベルの環境対応型ラインとなる。

 トヨタでは、本技術の導入を本年8月高岡工場でスタートしており、今後順次他の工場に拡大していく計画である。

 また、この技術の中塗り塗装への展開、さらにはクリアコートへ粉体塗装を採用することにより、環境負荷のさらに少ない塗装技術の実用化も検討中であり、さらなる環境改善を進めていく予定である。

(注)VOC
Volatile Organic Compounds(揮発性有機化合物、有機溶剤の総称)
溶剤排出量の単位で、塗装面積1m2当たりの溶剤の排出重量を表す。

以上

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