2006年11月30日

ITS技術の活用により交通事故低減を目指す、
「インフラ協調による安全運転支援システム」の公道走行実験を実施

-ドライブレコーダーを活用した効果検証により、今後のシステム開発・交通環境改善に活用―

 

 トヨタ自動車(株)(以下、トヨタ)は、ITS*1技術の活用により交通事故低減を目指す、「インフラ協調による安全運転支援システム*2(以下、インフラ協調システム)開発の一環として、警察庁が推進し、社団法人 新交通管理システム協会(以下、UTMS*3協会)が主催する「安全運転支援システム(DSSS*4)」の実証実験に参画し、2006年12月より、愛知県豊田市において公道走行実験を実施する。

 今回の取り組みは、2006年8月に発表したトヨタの安全技術・車両開発の方向性を示す
「統合安全コンセプト」に基づき、車両に搭載された個々の安全装備・システムに加え、クルマと道路インフラ・他車両・歩行者との連携を可能とするITS技術を活用した安全運転支援システムの一つとして、交通事故低減効果が期待される、道路インフラから車両への情報提供システムの開発促進を狙いとしたものである。
 今後は、
クルマを「より危険が少ない状態」に近づけていき、「事故を起こさないクルマ」の実現を目指し、情報提供に加え、ドライバーへの警報や車両の減速・停止といった「インフラ協調による介入制御」などへの発展を視野に入れたシステムの開発につなげていきたいと考えている。

 このようにトヨタは、
「サステイナブル・モビリティ」実現に向けた取り組みの一環として、モビリティ社会の究極の願いである「交通事故死傷者ゼロの実現」に貢献するため、「死傷者ゼロ・事故ゼロ」の追求を念頭に、「より安全な車両・技術開発」はもとより「交通環境整備への参画」「人に対する交通安全啓発活動」を通じ、交通安全への幅広い取り組みを強化していく。
【トヨタによる公道走行実験の概要】
 
  1.実験期間・地域、車両台数
  実験期間 2006年12月4日~2007年5月末までの、約6ケ月を予定
  実験地域 愛知県豊田市
  車両台数 ドライブレコーダーを装備した車両100台
   *  内、50台に通信インフラからの情報受信装置を装備
 
  2.公道走行実験の目的
  事故多発交差点における、通信インフラからの信号機(赤信号)や一時停止規制情報の提供の有無を中心に、公道における様々な運転状況でのドライバーの運転行動データを収集・分析することにより、インフラ協調システムによる事故低減効果を予測し、当該システムの開発に活かすとともに、交通環境改善に向けた調査・研究を推進
 
  3.効果分析における特長
  車両前方画像やドライバーの運転行動を記録することのできるドライブレコーダーを装備することで、様々な走行状況・運転状態におけるドライバーの運転行動の変化を、公道での実走行による、詳細な“生データ”として収集
  こうして得られたデータを分析し、交通事故低減効果を予測することにより、「実安全」(実際の運転状況における安全性)を追求し、「統合安全コンセプト」に基づく「事故を起こさないクルマ」の実現を目指した安全技術・システムの開発促進に寄与
 
  4.道路情報の送受信要領
  インフラ側では、豊田市内の交通事故多発交差点5ケ所に、光ビーコンによる通信機を設置し、信号機(赤信号)や一時停止規制情報を送信。
車両側では、実験用カーナビゲーションで受信し、画面に情報を表示しドライバーに提供
<信号情報利用システム>
信号情報利用システム
<規制情報利用システム>
規制情報利用システム
(資料提供:UTMS協会)
  5.データの分析・検証項目
  ①情報提供による交通事故低減効果の予測
  赤信号や一時停止規制情報の提供の有無による、交差点手前での減速による車速変化などドライバーの運転行動に関するデータを収集・分析し、交差点情報の提供による交通事故低減効果を予測
 
  ②交通事故低減効果の持続性の検証
  情報提供に対するドライバーの慣れが運転行動変化に与える影響について、実験期間を通して定量的に計測し、効果の持続性について調査。
この結果を、「情報提供のみでは事故防止効果が薄れていく」という仮説を踏まえ、ドライバーへの警報や車両制御システムとの連携による交通事故低減効果・持続性を高めるためのシステム開発に活用
 
  ③様々な状況下でのドライバーの運転行動の分析
  運転時における「ヒヤリ・ハット」(事故に至らなかった急ブレーキなど)でのドライバーの運転行動や周辺状況など、ドライブレコーダーに記録された詳細なデータを収集・分析し、今後のシステム開発・交通環境改善に向けた諸施策の検討に活用
 
*1 I  T  S 高度道路交通システム(Intelligent Transport Systems)
*2 インフラ協調による安全運転支援システム
    高度道路交通システム(ITS)のひとつで、ドライバーから直接見ることのできない情報や管制情報を、道路に設置された通信インフラや他の車両などから無線通信によって受信し、ドライバーに知らせることで、安全運転の支援や事故防止につなげるシステム。政府のIT戦略本部から公表された「IT新改革戦略」(本年1月)においても、“2008年度までに特定地域の公道において官民連携した大規模な実証実験を行うこと”、“2010年度から事故の多発地点を中心に全国への展開を図ること”(本文より一部抜粋)等の方針を提示
*3 UTMS 新交通管理システム(Universal Traffic Management Systems)。
光ビーコンを用いた個々の車両との双方向通信により、ドライバーに対してリアルタイムの交通情報を提供するとともに、交通の流れの積極的な管理によって「安全・快適にして環境にやさしい交通社会」の実現を目指すシステム
*4 DSSS 警察庁の推進する安全運転支援システム(Driving Safety Support Systems)。
実証実験は、警察庁・愛知県警察本部・豊田市の協力のもと実施し、12月4日(月)~6日(水)に、豊田市において、UTMS協会による試乗デモを予定
<ご参考>
 
【統合安全コンセプト】
 
  車両に搭載された個々の安全技術・システムの連携はもとより、将来的には、道路インフラとの協調(路車間)、自車以外の車両から得た情報の活用(車車間)を図り、運転状況に応じた最適な運転支援を行うことで、「事故を起こさないクルマ」の実現を目指した、今後のトヨタの安全技術・車両開発の考え方。
 
  車両の個々の安全技術・システムを連携、さらには、「路車間」・「車車間」でも協調し、相乗効果を高めることにより、運転状況を事故に至る危険の大きさで分類した「パーキング、予防安全、プリクラッシュセーフティ、衝突安全、救助」の全ての運転ステージにおいて、高い安全性を追求。今後、各システムの連携をさらに進めることにより、クルマを「より危険が少ない状態」に近づけていき、「事故を起こさないクルマ」を目指す。
≪個々の技術・システムの「連携」イメージ≫
個々の技術・システムの「連携」イメージ
≪インフラ協調システムの将来技術≫
 
  ドライバーや車載センサーから見えない情報(例えば交差点の車両など)や管制情報(例えば信号サイクルや一時停止規制情報など)については、道路側に設置されたセンサーや他車両・歩行者と協調するインフラ協調システム(路車間・車車間・歩車間通信)を導入し、車両側で対応する自律型の安全システムだけでは防ぐことが難しい交通事故に対応
[信号情報利用システム]
信号情報利用システム
[接近車両検知 ・ 歩行者検知システム]
接近車両検知 ・ 歩行者検知システム
[規制情報利用システム]
規制情報利用システム
[交差点死角画像伝送システム]
交差点死角画像伝送システム

以上

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  • 個々の技術・システムの「連携」イメージ
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