2017年08月02日

トヨタ、米国の先進安全技術研究センター(CSRC)にて
自動運転およびコネクティッドカー向けの技術研究を開始

-「CSRCネクスト」において、8つの機関とのパートナーシップの下、自動車の安全に関する11の研究プロジェクトを開始-
-今回の研究により、新時代のモビリティへの安全な移行を支援-

 

 トヨタ自動車(株)(以下、トヨタ)は、交通事故死傷者の低減を目指し、北米の大学や病院、研究機関等と共同研究を行う先進安全技術研究センター(Collaborative Safety Research Center、以下CSRC)において新たな研究プロジェクトの内容を発表した。新たな5カ年のプログラムである「CSRCネクスト」において、北米を代表する8つの研究機関とのパートナーシップの下、11件の研究プロジェクトを立ち上げ、進化する車両技術の可能性と課題に対応し、新時代のモビリティへ安全に移行するための研究を進める。

 今回の研究プロジェクトでは、先進技術が交通安全に幅広く与える影響や、人間とクルマとの相互の関係について重点的に研究する。具体的な研究課題として、緊急自動ブレーキなどの予防安全技術と衝突安全技術の統合、人間の感覚に合った先進技術の開発、ドライバーの状態の検知、実際の交通環境における運転データの研究に役立つ分析データの活用などがある。

 CSRCの所長であるチャック・グーラッシュ(Chuck Gulash)は次のように述べている。「自動運転とコネクティッドカーの技術の進化に伴う、交通社会の変容は今始まったばかりである。CSRCは世界に名だたる研究機関と協力し、その研究成果を公表している。CSRCが今回の研究プログラムを通じて、先進的なモビリティ・ソリューションや、安全かつ便利な未来の交通社会の実現に向け、貢献していくことを誇りに思う」

 CSRCは、2011年の設立以来、23の大学とのパートナーシップの下で44の研究プロジェクトの立ち上げと完了に取り組み、200以上の論文を発表するとともに、様々な車両安全関連の会議でも研究プロジェクトの発表を行ってきた。これらのCSRCのプロジェクトは、業界全体を通じた、自動車の安全性向上にも寄与してきている。例えば、車両安全におけるヒューマンファクターの研究、予防安全・衝突安全技術の効果の研究、安全運転のデータ分析のための新たなツールの開発などが挙げられる。

 2017年1月には「CSRCネクスト」を立ち上げ、それまで5年間で得られた洞察を基に3,500万ドルの規模で研究を実施し、自動運転やコネクティッドカーといった先進技術の安全性研究に取り組んでいく。「CSRCネクスト」は引き続き、TRI(Toyota Research Institute, Inc.)やTCNA(Toyota Connected North America, Inc.)による現行の研究プログラムを支援し、自動運転やコネクティッドカーの技術およびサービスの開発を推進する。

 CSRCのプロジェクトは以下の4つの方向性で研究を進めていく。

  1. 様々な衝突形態に対応するための、センサーの高度化による予防安全技術と衝突安全技術の統合
  2. 自動運転技術など、先進技術を搭載したクルマを、ドライバーのみならず、交通社会全体を見据えてより使いやすく、より人間の感覚に合ったクルマとするための開発モデルづくり
  3. 生体計測技術を適用し、ドライバーの健康状態を推定することにより、より良いモビリティにつなげていく研究
  4. ビッグデータと安全の分析手法を活用した、実際の交通環境に即した運転データを研究できるアルゴリズムやツールの開発

 「CSRCネクスト」の新たな研究プロジェクトおよびパートナーの一覧は下記のとおり。

プロジェクト名 内容 パートナー
危険回避操作時の人間の動作と筋肉の動き
(若年層ボランティアによる研究)
テストコース上で障害物を急ハンドルや急ブレーキで避ける際の、乗員である大人・子供の応答(挙動および筋肉活動)について定量化する。 フィラデルフィア小児病院
(Children's Hospital of Philadelphia)
予防安全・衝突安全技術の統合的安全性評価 将来の総合安全システム(ISS)導入後の安全に関する残課題を見積もる。ISSは、予防安全技術(車両、歩行者、自転車に対する自動ブレーキや車線維持アシストなど)と衝突安全技術(先進エアバッグ、カーテンシールド・エアバッグ、ルーフ強度、歩行者保護アクティブフードなど)で構成される。 バージニア工科大学
(Virginia Tech)
衝突回避操作時の乗員姿勢の動的変化 テストコースにおける緊急自動ブレーキ(AEB)作動時および衝突回避操作時の乗員姿勢の変化について研究する。 ミシガン大学交通研究所
(University of Michigan Transportation Research Institute)
車載緊急病状検知システム開発に向けた研究 不要なノイズに紛らわされることなく、心筋梗塞および心筋虚血の発症を確実に検知・予測する技術の開発を行う。院内で、あるいは運転中に、心臓病を発症した患者から収集した心電図データを用いて、機械学習モデルとして解析し、運転中の重篤な心臓病の発症を検知・予測する ミシガン大学救命救急研究センター
(University of Michigan Center for Integrative Research in Critical Care; MCIRCC)
アダプティブ・ヘッドライト・システムのメリット評価 歩行者や自転車を検知するアダプティブ・ヘッドライト・システムについて、事故被害者の低減という観点で、人間の反応特性や予想される効果を定量化する。ドライバーおよび歩行者/自転車シミュレーターによる研究を活用する。 アイオワ大学-高度運転シミュレーター
(University of Iowa-National Advanced Driving Simulator)
通常時・制御時の運転に関する研究
  • 自動運転~手動運転の移行について
人間による運転と自動運転との切り替え時のドライバーの行動に関する有益なデータを分析し提供する。 アイオワ大学-高度運転シミュレーター
(University of Iowa-National Advanced Driving Simulator)
路外逸脱テスト手法の開発 路外逸脱時の警告・支援制御システムについて、テストコースでの性能評価シナリオおよび手法を開発する。 インディアナ大学-パーデュー大学インディアナポリス校
交通・予防安全研究所(TASI)
(Indiana University-Purdue University Indianapolis, Transportation Active Safety Institute (TASI))
ドライバー間のコミュニケーション分析
  • 「運転時のやりとり」
ドライバーが、他の道路ユーザー(歩行者や他の車両など)と実際どのようにコミュニケーションしているかについて、最先端のコンピューター・ビジョン技術を利用して明らかにする。 マサチューセッツ工科大学エイジラボ
(Massachusetts Institute of Technology Age Lab)
周辺環境認識技術および評価指標 視覚センサーにより走行シーンを認識する技術を、機械学習を応用して開発する(車両、歩行者、自転車、道路標識、建物、縁石など)。 マサチューセッツ工科大学エイジラボ
(Massachusetts Institute of Technology Age Lab)
ドライバー間のコミュニケーション理論
  • 社会的インタラクションの強化
交差点でドライバー同士がどのようなコミュニケーションを行うか、理論的かつ数学的な枠組みを開発し提供する。 ウィスコンシン大学
(University of Wisconsin)
実環境における人間中心の自動運転 : 全体的認識とパフォーマンス指標 自動運転と人間による運転(手動運転)との移行に関し、コンピューター予測モデルを開発し提供する。予測モデルには、人間の動的および知覚的行動に由来する要因と、交通シナリオおよび交通環境に由来する要因を含む。 カリフォルニア大学サンディエゴ校
(University of California, San Diego)

以上