基本的な考え方
トヨタの究極の願いである「交通事故死傷者ゼロ」に向けて、安全なクルマの開発が必要なことはもちろんですが、並行して、ドライバーや歩行者という「人」に対する啓発活動、信号設置や道路整備など「交通環境」整備への働きかけも欠かせません。
トヨタでは安全なモビリティ社会の実現に向け、人・クルマ・交通環境の「三位一体の取り組み」を推進するとともに、事故に学び、商品開発に活かす「実安全の追求」が重要と考えています。
また、交通事故死傷者ゼロに向けた安全技術の基本的な考え方として、「統合安全コンセプト」を掲げ、技術開発を推進しています。
統合安全コンセプト
駐車から通常運転、衝突直前、衝突、事故後の救助まで、「さまざまな運転ステージで最適なドライバー支援を行う」。そして、クルマに搭載される安全システムを個別に考えるのではなく、「個々のシステムの連携を図ることで、安全性を追求する」。これが統合安全コンセプトの考え方です。
予防安全
重大死傷事故低減に寄与する機能を取り入れたToyota Safety Senseは、先行車や歩行者との衝突回避支援または被害軽減を図る「プリクラッシュセーフティ(PCS)」、車線逸脱による事故の予防に貢献する「レーンディパーチャーアラート(LDA)」、夜間の前方視界確保を支援する「オートマチックハイビーム(AHB)」を中心とする、複数の予防安全機能をパッケージ化しています。
Toyota Safety Senseは2015年の市場投入以来、グローバル累計装着台数は4,050万台を達成(2023年7月)しています。現在、日米欧のほぼすべての乗用車への設定(標準もしくはオプション)を完了し、中国・アジアの一部、中近東、豪州など、主要な市場を含めた144の国と地域に導入しています。
衝突安全
衝突安全は、衝突エネルギーを吸収するボデー構造と、乗員を保護する装置を組み合わせ、衝突の被害を最小限に抑えることを目的としています。
1995年、世界トップレベルの安全性を追求するため、GOA(Global Outstanding Assessment)という衝突安全性能に関するトヨタ独自の厳しい社内目標を設定し、衝突安全ボデーおよび乗員保護装置を開発することにしました。以後、GOAを常に進化させ、多様な事故における実安全性を追求し続けています。
また、交通事故における人体の傷害を解析するため、トヨタは豊田中央研究所と共同でバーチャル人体モデル「THUMS(Total HUman Model for Safety)」を開発しました。シートベルトやエアバッグなどの安全装備や、歩行者事故時の傷害を軽減する車両構造など、さまざまな安全技術の研究開発に活用しています。2021年1月から、より多くのユーザーに幅広く活用いただけるよう、ウェブサイトを通じてTHUMSを無償で公開しています。
救助
事故や急病の際は、一刻も早い対応が求められます。緊急通報システム「ヘルプネット®」サービスは、突然の事故や急病時に、専門オペレーターが警察や消防に迅速な緊急車両の手配を行います。エアバッグ作動時には自動でオペレーターに接続し、ドクターヘリなどの早期出動判断を行う「D-Call Net®」に対応しています。このサービスは、車載通信機(DCM)を使って車両データをヘルプネットセンターに送信することで提供されます。
自動運転技術
トヨタは、1990年代から自動運転技術の研究開発に取り組んできました。人とクルマが心を通わせながらお互いを高め合い、気持ちの通った仲間のように共に走るというトヨタ独自の自動運転の考え方が「Mobility Teammate Concept」です。クルマが人から運転を奪うのでも、単に人に取って代わるのでもなく、人とクルマが双方をパートナーとして尊重し合い、運転を楽しみ、時には運転操作を任せることで、本当の安全・安心、移動の自由を実現したいと考えています。
2021年4月発売のレクサス「LS」、「MIRAI」には、高度運転支援技術Lexus Teammate、Toyota Teammate搭載車を設定し、自動車専用道路での運転支援Advanced Driveにより、ドライバー監視のもと、実際の交通状況に応じて車載システムが適切に認知、判断、操作を支援し、車線・車間維持、分岐、車線変更、追い越しなどを行いながら、目的地に向かって分岐までの運転を支援します。高い安全性と安心感を実現し、目的地まで疲れにくく、快適な移動を提供します。
ディープラーニングを中心としたAI技術も取り入れ、運転中に遭遇し得るさまざまな状況を予測・対応した運転を支援します。加えて、ソフトウェアアップデートに対応しており、無線通信、または有線接続により、最新版のソフトウェアに更新が可能です。
クルマの用途は幅広く、ニーズはますます多様化しており、トヨタは、個人所有車両「POV(Personally Owned Vehicle)」向けに加えて、ヒト、モノの移動に関わる事業「MaaS(Mobility as a Service、マース)」分野における自動運転技術の研究開発にも取り組んでいます。法人向け販売車両の高度な自動運転技術を早期に市場に導入し、データ収集・分析からのフィードバックを通じて自動運転技術をさらに進化させていきます。
交通安全意識向上に向けた取り組み
交通事故未然防止のために、ドライバー、歩行者など人への啓発活動を実施しています。
例えば、ドライバー向けには、富士スピードウェイ内の「トヨタ交通安全センター モビリタ」にて安全運転実技講習会「トヨタ ドライバーコミュニケーション」を定期的に開催しています。また、歩行者向けには、全国のトヨタ販売店と協同で、全国の幼稚園・保育園の園児を対象に、幼児向け交通安全教材の贈呈活動を1969年から継続して実施しています。