ステークホルダーへの技術紹介を通じた仲間づくりと、トヨタの技術資産の記録を目的に「トヨタテクニカルレビュー(TTR)」を発行しています。2023年(Vol.69)より、発行頻度を年1回から年2回に変更しました。

トヨタテクニカルレビュー(TTR)Vol.69

最新号Vol.69 No.2

発行日

  • (日本語版)2024年3月25日
  • (英語版)2024年7月下旬予定
TTR Vol.69-2 全PDF(PDF15MB)

目次

特集「カーボンニュートラル達成に向けたマルチパスウェイ」

  • TOYOTA CROWN
    クラウンは、トヨタ独自の国産技術で作り上げた初の量産型乗用車として1955年に誕生。戦後間もない時代に、初の独自開発で苦難を重ね高級車を作り上げた「革新と挑戦」のDNAは、その後の歴代クラウンに受け継がれ、常に時代の一歩先を行く新しい価値を追求し、多くのお客様にご愛用いただいてきた。そして時代変化にあわせ、多様化するライフスタイル/ライフステージに寄り添う存在として変化を続けた。16代目クラウンは、その開発にあたり、「クラウンとは何か」を徹底的に見つめ直し、「これからの時代のクラウンらしさ」を追求した結果、全く新しいクラウンを提案。その内容と技術について概説する。
  • 車載用パワー半導体の進化と今後の展望
    トヨタではカーボンニュートラル達成に向けて世界中のお客様に選んでいただけるフルラインナップの電動車の選択肢を用意していくが、BEV、HEV、PHEV、FCEV等、全ての電動車において大電流を高速で通電、遮断するパワー(電力用)半導体が用いられており、このパワー半導体の性能が車両の電費向上や、ユニットの小型軽量化に大きな影響を及ぼす。本誌ではパワーコントロールユニット(PCU)を参考例として、パワー半導体がこれまでどのように進化し、どのように電動車の進化や展開性向上に貢献してきたか、電動車の選択肢を増やし、普及に貢献してきたかについて紹介する。
  • 電動化に貢献するパワートレーン潤滑技術
    カーボンニュートラル達成に向け、当社はマルチパスウェイの方針のもと、さまざまなパワートレーンの開発を推進している。そのユニット効率向上が求められるなか、潤滑油の改良、低粘度化がもたらす効果は非常に大きい。本報では、電動車の共通ユニットであるトランスアクスルの潤滑油について、従来よりも画期的に低粘度化した潤滑油の開発事例、および従来とは異なるアプローチで低粘度化の実現を目指す次世代エンジン油の開発状況について紹介する。
  • BEV用低導電率クーラントの開発
    トヨタ自動車では、地域の事情やお客様のニーズにあわせて幅広い選択肢を用意することで地球温暖化防止のためのCO2削減に貢献できると考えている。近年、BEV(Battery Electric Vehicle : 電気自動車)が注目されている。BEVにはリチウムイオン電池が搭載されており、万が一、クーラント(冷却液)が電池に被水し、電池が短絡した場合には、電池が異常発熱する可能性がある。そこで我々は、トヨタ自動車の安心・安全に対するこだわりとして、被水時の短絡による電池の異常発熱を回避すべく、BEV専用の低導電率クーラントを開発し、お客様に安心・安全にBEVを使用していただけるようにbZシリーズ第一弾となるbZ4Xに導入した。
  • グリーンカーボン、ブルーカーボン
    2050年のカーボンニュートラル達成に向けて、トヨタは、CO2排出量の削減に取り組むと同時に削減し切れずに排出されたCO2を回収する技術開発にも取り組んでいる。CO2回収技術としては、CO2を人工的に回収する技術開発に加え、グリーンカーボンやブルーカーボンと呼ばれる陸上生態系や海洋生態系といった自然に吸収される炭素量を増加させる技術の開発も行っている。この自然を対象とした技術開発においては、生物多様性への配慮も重要となってくる。本稿では、グリーンカーボン、ブルーカーボン、及び生物多様性について、実態や世の中の動向に触れながら、トヨタの取り組みを紹介する。
  • 将来の日本を救う!滞空性空中プラットフォーム “マザーシップ”プロジェクトの企画と開発
    将来の日本の社会課題への“解”となる気概を持ち“マザーシップ”プロジェクトを企画し開発を始めた。本稿ではまず“マザーシップ”と名付けた翼型形状の大型高性能カイトを高空滞空性空中プラットフォームとして活用するビジョンと開発戦略を紹介する。プロジェクトは2018年から開始、まずは小型のカイトを自前で設計、製作しながら主な構成技術は何かを熟慮し開発を進めてきた。プロジェクトの成功に不可欠な開発メンバーの熱意もあり、カイトシステムやそれら構成技術が色々な産業に活用できる潜在力を示すところまできた。今後は“マザーシップ”ビジョンに向けより高く、長時間飛ばすための性能向上と実際の活用を考慮した開発を進める。

論文/解説

  • モビリティの進化とIoT化に貢献する金属ナノ粒子の開発
    Society5.0スマート社会の到来で、さまざまな社会課題の解決が期待されており、トヨタにおいてもさまざまな取り組みを、クルマを軸に行っている。上述社会を実現するための基盤技術に、ナノ粒子を印刷するプリンテッドエレクトロニクスがある。我々はこれまで自動車材料開発で培ったアセットを活かし、プリンテッドエレクトロニクスを実現する低温焼結可能なナノ粒子を開発したため、本稿でその概要を解説する。自動車用途のみに限らず、世の中に広く普及させることで、Society5.0の社会システムによる社会課題解決、それに付随したあらゆる産業の発展、幸せの量産に貢献することを目指す。

受賞技術概要

社外発表論文一覧