Apr. 26, 1974
トヨタ、カローラおよびスプリンターシリーズを全面改良
-カローラは、一部現行車種を併売-
トヨタ自動車販売(株)は、昭和45年5月以来4年振りに全面的に改良したカローラ30シリーズ及びスプリンターシリーズを、4月26日全国一斉に発売する。
新発売のカローラ30シリーズは、セダン、ハードトップ及びバン、スプリンターシリーズはセダン及びクーペでそれぞれ構成されている。
なお、既存のカローラ20シリーズの一部車種は新しいカローラ30シリーズと併売される。
カローラ30シリーズ及びスプリンターシリーズの開発にあたっては、50年排出ガス規制対策への準備と、大衆車としての経済性を維持しながら上級車なみの安全性、快適性を確保し、いわゆる快適経済車を完成することをその設計思想とした。
なお、スプリンターについては、個性的なイメージをもたせ、カローラとの一層の差別化を図った。
今回の改良では、現時点での排出ガス規制のクリアはもとより、50年排出ガス規制への準備のため、エンジンルームの拡大、フロアの構造などボデーに改良を加えた。安全面では、国内保安基準はもとより世界各国の安全基準(米国安全基準、ヨーロッパ各国の保安基準)についても充分な対策を実施した。また、トレッド、ホイールベース、全幅をそれぞれ広げて操縦安全性及び居住性の向上を図った。
この結果、カローラ30シリーズ及びスプリンターシリーズは最近著しく充実されている世界の主要大衆車の中で充分対抗できる品質性能を備えることになり、世界的な小型車移行傾向のなかで、国際競争力を一段と強めることができた。
カローラシリーズの国内販売目標は当面、月販乗用車23,000台、バン7,000台、計30,000台である。また、スプリンターシリーズの国内販売目標は10,000台である。
なお、価格は別表のとおりであるが、安全対策の充実を中心としたグレードアップ及びその他諸費用の高騰などにより大幅なコストアップとなったが、社会的な影響を配慮し、企業努力により極力吸収、値上げ幅を抑えた。値上げ幅は、カローラのセダンは基本車種で25,000円、平均で30,000円、ハードトップは基本車種で44,000円、平均で55,000円、バンは基本車種で20,000円、平均で25,000円である。また、スプリンターのセダンは基本車種で27,000円、平均で35,000円である。クーペについては、輸出を考慮して特に装備を充実したため、平均で82,000円の値上げとなった。
カローラ30シリーズ及びスプリンターシリーズの車両概要は別紙のとおりである。
- カローラ30及びスプリンターの公害安全対策
- カローラ30及びスプリンターシリーズに搭載されている各エンジンはそれぞれ現行排出ガス規制を充分満足するものである。なお、50年排出ガス規制に対する準備措置として、対策システムが完成し次第、装着できるようエンジンルーム内及びフロアにスペースを拡大確保するとともに、冷却性能を向上させた。
また、エンジンについては、それぞれ次のように改良を行った。
- T型、T-B(R)型、2T-B(R)型、2T-G(R)型エンジン
エキゾーストマフラーの容量を増すとともに、オイルバンの容量を増すなどの改良を施し、高速走行時での信頼性の向上を図った。 - 2T型エンジン
従来からセリカ、カリーナ、コロナに搭載している1,600cc2T型エンジン(シングルキャブ)を新たに採用した。 - その他
搭載各エンジンのラジエーター容量を増大して冷却性能の向上を図るとともに、ラジエーターを補助タンク付密封式とし、メンテナンス期間の延長を図った。また、維持費低減のため排気管のテールパイプ及びメインマフラーの耐久性の向上を図った。
- ボデー構造はユニットコンストラクションボデーとし、さらにキャビンはつぶれにくく、その前後のボデーは衝撃を吸収するようにサイドメンバーを入れた構造とした。これらは万一衝突した際の乗員保護を目的としたものである。
- ガラス面積を大きくしたボデー設計によって、全般的な視界の向上を図った。更にカローラ30セダンのリヤウインドウに鞍形の逆反りガラス、スプリンタークーペのリヤウインドウに逆反りガラスを採用することによって後方視界を拡大した。また、雨天時の視界を良くするため、ワイパーブレードを大型にした。
- 前後のバンパーは、コーナー部にゴム製のサイドプロテクターを付けボデーとの間隙をなくすとともに、マーク、オーナメント類はエッジを取った安全なものを採用して歩行者の安全を図った。
- ドアアウトサイドハンドルはケース付とするとともに、ドアロックを強化し側面衝突時にもドアが開かないように安全性を高めた。同時に側面衝突時のショックを軽減するようにドアの厚さを増した。
- トレッドとホイールベースを広くするとともに、タイヤ、サスペンション、ステアリングリンクの配置を改良して操縦安定性の向上を図った。
- 計器盤は表皮、パッド及び樹脂を一体で構成し、全面軟質パッドでおおった大型のものを採用、乗員の安全性を高めた。
- フロントシートには、運転席、助手席ともに3点式シートベルトを全車種に標準装備し、シートベルトの内側のアンカレッジはシートフレームに取り付けてシートベルトの装着を容易にした。また、ハードトップを除く全車種にラップベルトアウター部とショルダー部を一本のウェビングで構成した新設計の連続ウェビングタイプを採用してベルト調整を容易にした。
- 各種スイッチ類(ワイパー、ウォッシャー、ライトコントロール、ターンシグナル、ビーム切替、ハザード)をコラムに集中するとともに、ラジオ、ヒーター、シガレットライターも計器盤上に扱い易く配置し、3点式シートベルトを装着した状態でも容易に操作できるようにした。
- 万一の時でも、衝撃をスムーズかつ確実に吸収できるメッシュ式の衝撃吸収ステアリングを全車種に標準で装備した。また、ステアリングメインシャフトを二分割とし中間にカップリングを設けて路面からの衝撃振動の緩和を図った。
- リヤフロアに補強バーを追加して、万一後部から衝突された場合にも、車両の損傷を軽減し、ガソリンタンクを保護するようにした。
- ブレーキ性能を向上するため、次の改良をした。
- ディスクブレーキ付き全車と1,400ccのドラムブレーキ付き車に新たにブースターを装着した。
- 1,200cc車のディスクブレーキのディスク径を増大した。
- 1,400cc車のディスクブレーキのホイールシリンダー径を増大した。
- プロペラシャフトは、チューブの直径を増して安全性に対して充分な余裕をとった。
- ターンシグナルランプ、駐車灯に魚眼カットレンズを採用し、視認性の向上を図った。
- 予防安全のため、燃料残量警告灯、ストップランプバルブ切れ警告灯、ランプ消し忘れ警告灯などを、グレードに応じて標準装備またはオプションとして設定した。
- カローラ30セダン、ハードトップの概要
- 外観・内装及びボデー
- セダンは、カローラの伝統的なセミファストバックのスタイルとし、既存のカローラシリーズと比べ、全幅を65mm増し、広いトレッドと広いガラス面積をもった視界の良い安定感のあるものとした。
- ハードトップは、センターピラーのない、サイドメンバー構造で、側方視界を良くし、セダンと同様、全幅を広げ広いガラス面積、広いトレッドをもった安定感のあるスタイルとした。
- 天井は、一体成形天井を採用して、乗員の頭上空間(ヘッドクリアランス)の増大と断熱、防音効果の向上を図った。
- ドアインサイドハンドルは、ドアトリムに埋め込んだプルハンドル式で、4ドア車のロッキング機構はセンターピラー近くのドア上部にプッシュボタン式のものを設け、前席からのリヤドア操作を容易にした。
- 室内換気は、カウルより外気を入れ、計器盤中央部と左右両側のベンチレーターより導入し、コーターパネルの左右に設けたダクトにより室外に排出する方式で、ブーストベンチレーションの採用と相俟って、室内換気能力をアップした。
- スタンダードを除くセダン2ドア車とハードトップの助手席シートに、足踏み式ウォークイン機構を採用し、後席への乗降を容易にした。
- エンジンルームの冷却効果を向上させるために、全車種のエンジンフードに、空気抜きのルーバーを設けた。
- エキゾーストパイプの指示方法の改良、ボデーの防音材の向上などで、騒音をより少なくした。
- 燃料タンクの容量を7L増して50Lとし、燃料補給間隔を長くした。
- 駆動系及び足回りの改良
- ステアリングギヤは、全車種リサーキュレーティングボール式で、ギヤ比は18.0~20.5の可変式とし、操縦性を向上させた。(但し、カローラレビンのギヤ比は16.1)
- トランスミッションは、従来使用していた、4速フロアシフト、5速フロアシフト及び2速オートマチックの構成部品を一部改良して、パワープラントの剛性を上げ、ギヤの形状を変えるとともに、エンジンマウンティングまわりを変更して、振動騒音特性の改善を図った。また、1,400cc、1,600cc車(カローラレビン及びSRを除く)には、新たに、3速オートマチックを採用した。
- 1,200cc車のクラッチ操作は機械式で、トルクの伝達方式を、ボスドライブ方式から、コーダルストラップドライブ方式に変更し、操作時のトルク伝達をより円滑にした。また、クラッチレリーズベアリングのグリース容量の増大、シール性向上などにより、異音及び摺動抵抗の減少を図った。1,400cc、1,600cc車のクラッチ操作は、従来のように油圧式を採用しており、クラッチペダル踏力の軽減、クラッチレリーズベアリングの異音及び摺動抵抗の減少を図った。
- 1,200cc車のデフ・ギヤを5.7インチから6インチに変更し、耐久性の向上及び騒音の減少を図った。
- フロントサスペンションは、従来から実績のあるストラット型独立懸架方式で、車両重量の増加に伴ってサイズアップするとともに、耐久性を増した。リヤサスペンションは非対称半楕円リーフスプリング方式である。
- 装備の充実
- AMラジオを、セダンスタンダード、ハードトップSR及びカローラレビンを除く全車種に標準で装備した。また、AM/FMマルチラジオ及びカセット式カーステレオを全車種にオプションとして設定した。
- 内外気切替えができ、頭寒足熱が効果的に得られるバイレベル方式のヒーターを、スタンダードを除く全車種に標準で装備した。また、後部座席の暖房効率を良くする後席用ヒーターリヤダクトを寒冷地用オプションとして設定した。
- インナーミラーは、全車種脱落式で、従来のピボットスクリュー式から板バネ式に変更し、脱落した場合に取り付け易くした。また、プリズム鏡仕様の防眩式インナーミラーを、グレードに応じて標準装備またはオプションとして設定した。アウトサイドミラーは、全車種とも可倒式で、平型ミラー(スタンダード、デラックス、ハイデラックス)、スポーティミラー(SL、GSL)及び流線形ミラー(SR、カローラレビン)の3種類を設定した。
- ルームランプは大型化して、天井中央に装備し、照度を上げるとともに、後席での使用を便利にした。
- 多湿時などに後方視界を良くする熱線入りリヤウインドウの装着車種を拡大し、グレードに応じて標準装備またはオプションとして設定した。
- スプリンターシリーズの車両概要
- 外観・内装及びボデー
- セダンのスタイルはヨーロッパ風のしゃれた格調の高いデザインで、カローラとははっきり差別して設計した。既存のスプリンターセダンに比べて、全高を25mm低く、全幅を65mm広げて、低くかつワイドな安定感をもたせることによって小型車なみの居住性を確保した。フロントは気品のある三分割グリルで、リヤーは視認性の良いたて型で大型のリヤコンビネーションランプで特徴づけられた4ドアセダンである。
- クーペは個性的なユーザーを対象としており、ボデーシェルをロングノーズ、フルファストバックとした。また、既存のスプリンタークーペに比べて全高を35mm低くするとともに、全長を40mm、全幅を95mmそれぞれ大きくして、低く安定感のある個性的なスタイルとした。ヘッドランプまわりは彫りを深くして特徴をもたせ、リヤーには視認性の良い大型のリヤコンビネーションランプを採用した。側面の窓はドアサッシュのないサッシュレス構造にして広く、明るく軽快な感じとした。
- 天井は全車種成形天井を採用して、充分な頭上空間(ヘッドクリアランス)をとって広い居住空間を確保するとともに、断熱、防音効果の向上を図った。
- クーペ系全車種にチケットホルダー付きのオーバーヘッドコンソールを天井と一体成形して標準装備した。このオーバーヘッドコンソールには、ストップランプバルブ切れ警告灯、スポットランプ及び高度計をグレードに応じて標準またはオプションとして設定した。
- 計器盤はコックピットタイプのものとするとともに、メーター、ゲージ、ウォーニングランプ類、時計などを一つのケース内に組み込んだコンビネーションメーター方式として、運転操作をしやすくした。なお、セダン用とクーペ用は、それぞれのユーザー特性を考慮し、別設計のものとした。
- クーペの助手席シートに足踏み式ウォークイン機構を採用し、後席への乗降を容易にした。
- 燃料タンクの容量を7L増して50Lとし、燃料補給間隔を長くした。
- その他の改良点はカローラ30シリーズとほぼ同様である。
- 駆動系及び足回りの改良
- ステアリングギヤは全車種リサーキュレーティングボール式で、ギヤ比は18.0~20.5の可変式とし、操縦性を向上させた。(但し、スプリンタートレノ及びトレノGTは16.1)
- トランスミッションは、従来使用していた4速フロアシフト、5速フロアシフト及び2速オートマチックの構成部品を一部改良して、パワープラントの剛性を上げ、ギヤの形状を変えるとともに、エンジンマウンティングまわりを変更して、振動騒音特性の改善を図った。また、1,400cc、1,600cc車(スプリンタートレノ、トレノGT、SR及びクーペGSを除く)には、新たに3速オートマチックを採用した。
- その他の改良点はカローラ30シリーズとほぼ同様である。
- 装備の充実
- AMラジオをスプリンタートレノ及びSRを除く全車種に標準で装備した。また、AM/FMマルチラジオ及びカセット式カーステレオをグレードに応じてオプションとして設定した。
- 内外気切替えができ、頭寒足熱が効果的に得られるバイレベル方式のヒーターを全車種に標準で装備した。また後部座席の暖房効率を良くする後席用ヒーターリヤダクトを寒冷地用オプションとして設定した。
- インナーミラーは全車種脱落式であり、プリズム鏡仕様の防眩式を標準で装備した。
- その他は、カローラ30シリーズとほぼ同様である。
- カローラ30バンの車両概要
- 公害安全対策
- 今回、バンに新たに、1,400ccT型エンジンを搭載し、余裕性能をもった1400シリーズ4車種を新設した。排出ガス規制への対応は、セダン、ハードトップと同様である。
- トレッドを40mm、ホイールベースを35mm、それぞれ広くして操縦安定性の向上を図った。
- 計器盤まわりは、乗用車系と同様で、3点式シートベルトを装着した状態でも操作が容易にできるように、コックピットタイプとするとともに、各種スイッチ類をステアリングコラムに集中した。
- メッシュ式の衝撃吸収式ステアリングを、ハイデラックスに標準装備し、スタンダード及びデラックスにはオプションとして設定した。
- プロペラシャフトは、チューブの直径を大きくし、安全性に対して十分な余裕をもたせた。
- ボデーシェルの基本構造は、従来から実績のあるフレーム及びメンバー部材をボデーに溶接して構成した剛性の高い一体構造方式を踏襲している。また、リヤアンダーボデーは、燃料タンク。スペアタイヤを床下に格納して、荷室フロアを一平面として荷室の有効容積を確保している。
- 外観・その他
- 乗用車系と同様にスタイルを全面改良し、全長を60mm、全幅を65mm、それぞれ大きくして安定性のあるスタイルとした。また、荷室についても幅を35mm広げ作業性の向上及び積載能率の向上を図った。
- ステアリングギヤは全車種リサーキュレーティングボール式を採用するとともに、ギヤ比は18.0~20.5の可変式として操縦性能の向上を図った。
- ステアリングメインシャフトは2分割とし、中間にカップリングを設け路面からの衝撃振動の緩和を図った。
- 荷室のデッキマットはリヤシートバックとデッキフロア部を一体として、デッキとシートバックとの間隙をなくした。
- フロントシートは、乗用車系と同様に、ヘッドレストをシートバックと一体にしたセパレートシートで、シートのスライド幅は160mmである。なお、デラックス、ハイデラックスのフロントシートバックはリクライニング式である。
また、2ドア車のデラックス、ハイデラックスには助手席にウォークイン機構を採用し、後席への乗降を容易にした。 - 燃料タンクは容量を7L増して47Lとし、燃料補給間隔を長くした。
- 熱線式リヤウインドウを、1400ハイデラックスに標準装備し、スタンダードを除くその他の車種にはオプションとして設定した。
以上