トヨタ自動車(株)(以下トヨタ)は、世界最高の環境性能を追求すると同時にクルマの本質的魅力である「走る楽しさ」を飛躍させるという「ハイブリッド・シナジー・ドライブ」をコンセプトに、モーターパワーとエンジンパワーのシナジー(相乗)効果を革新させた、新世代ハイブリッドシステム「THSII」を開発した。
トヨタはこれまで、1997年に世界で初めて量産ハイブリッドシステム「THS*1」を搭載したプリウスを発売したのを皮切りに、2001年にはCVTを組み合わせた「THS-C」搭載エスティマハイブリッド、マイルドハイブリッドシステム「THS-M」搭載クラウンを発売し、現在、ハイブリッド車の全世界販売累計台数は13万台を超えている。また、2002年には燃料電池
ハイブリッド車「トヨタFCHV*2」を発売し、世界のハイブリッド車をリードするメーカーとして21世紀のクルマの革新を図ってきた。
今回開発した「THSII」は、これらのハイブリッド技術を結集し、電源系の高電圧化をはじめとする制御系の進化と、モーター高出力化などにより効率をさらに高め、性能を一段と進化させた新世代ハイブリッドシステムである。
すなわち、エンジンを主動力に低出力モーターが一時的に駆動力を補助する他の方式とは異なり、モーターを重視するTHSの特長をさらに進化させ、出力密度を世界最高水準まで高めた高出力モーターを、より効率的にエンジンと協調し運転させることで、世界最高レベルの燃費を追求すると同時に、走りの魅力を飛躍させた点が最大の特長である。
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THSIIは、モーターと発電機の効率を高めるとともに、エネルギー伝達系の大幅な損失低減を図ったほか、車全体のエネルギー最適制御を進化。 |
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その作動はエンジン効率の低い条件では徹底してエンジンを停止しモーターのみで走行し、エンジン効率の高い条件では発電しながら走行、また、減速・制動時はエネルギー回生量を高めるなど、走行エネルギーの入出力制御をより高効率なものとし、世界最高レベルの燃費を追求 |
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エミッションは、各国で実施あるいは予定されている最も厳しい排気規制に対応(社内測定値) |
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1.5倍に出力を高め、高性能化したモーターと1.5リットルエンジンの相乗効果によって、2.0リットルエンジン車以上の加速性能を実現し、応答性に優れ、変速ショックのないなめらかで、力強いハイブリッド車の走りを一段と向上 |
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電源は、新開発の昇圧回路を組み込みバッテリー電圧を500Vに昇圧して、モーター、発電機を高電圧で駆動することにより、モーターの高出力化と電力損失の抑制を実現したほか、モーターの永久磁石の効果的な配置、バッテリーの高性能化、エンジンの改良などにより、システムを一新 |
なお、トヨタは、本システム搭載米国向け次期プリウスをニューヨーク国際オートショーに出展したほか、本システムのさらなる高性能化を図り、大排気量・重量車にも展開する予定である。 |
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*1 THS |
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TOYOTA Hybrid System |
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*2 FCHV |
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Fuel Cell Hybrid Vehicl |
1. |
世界最高レベルの燃費を追求 |
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基本システムは、プリウスに搭載の「THS」をベースに、モーター、発電機の電源系を高電圧化して、エネルギー伝達系の損失を大幅に低減し、車全体としてのエネルギー効率最適化制御を進化させることにより、画期的な高効率化を図っている。 |
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このシステムは、エンジンを主動力に低出力モーターが一時的に駆動力を補助する方式とは異なり、
モーターを重視するTHSを、さらに進化させたもので、重量、容積あたりの出力を世界最高水準まで高めた高効率高出力のモーターを、高効率エンジンと協調させて運転させることで、
さらなる高効率化を実現している。
具体的には、エンジン効率の悪い低速走行条件などでは徹底してエンジンを停止させ、モーターのみで走行し、通常走行時は高効率エンジンを動力源に、動力分割機構によりエンジンの動力を発電機駆動用と車両駆動用に分配し、効率の良いエンジン運転領域を選択して運転すると同時に、発電力と駆動力の配分をエネルギー効率が最良となるよう連続的に制御している。
さらに新ブレーキシステムと組み合わせた新回生協調ブレーキシステムの採用、高性能化したバッテリー、エネルギー伝達系の大幅な損失低減とあいまって回生エネルギー量を増加させ、これらにより世界最高レベルの燃費を追求している。 |