Aug. 04, 2017

初代プリウス 1997-2003

 

初代プリウス 1997-2003 初代プリウス 1997-2003
2017年8月4日

初代プリウス 1997-2003

 発売当初のキャッチコピーは「21世紀に間に合いました」と、まさに化石燃料依存から脱しようとする21世紀のクルマ像の先駆けとなった。既存のガソリン車と同等の走行性能を保ち、約2倍の低燃費とCO2排出量半減などを実現。2000年から輸出を開始し、環境に敏感なアメリカ市場では大きな話題となり、セレブリティーたちが率先して愛用したことも社会現象となった。

あしたのために、いまやろう。これからのクルマづくり

 21世紀に向け、トヨタは「クリーンで安全な魅力あふれる商品提供による、住み良い地球と豊かな社会づくり」という基本理念に基づいてエコプロジェクトを展開。そのフラッグシップともいえるプリウスが誕生した。「プリウス」とはラテン語で「~に先立って」という意で、「地球の未来を築いていくクルマを」との願いが込められたクルマである。

 プリウスのテーマは、“ハーモニアスビークル”。CO2の削減、省資源など地球環境に配慮しつつ、クルマの楽しさという本来の魅力を追求し、クルマと人、クルマと社会、そしてクルマと地球の調和をめざしたイノベーティブなセダンである。新駆動システムとして画期的な低燃費と排出ガス低減を実現するトヨタハイブリッドシステム(THS)を採用するとともに、先進的な内外装デザインでハイブリッド車としてのアイデンティティを明確に打ち出している。

あしたのために、いまやろう。これからのクルマづくり

THSだけでなく、多面的にエコロジーを追求

 プリウスは、新駆動システム・THSだけでなく、あらゆる観点からエコロジーにアプローチ。コンピューター解析を駆使し、空気の流れをスムーズにするボディ形状を採用するとともに、床下のフラット化を実施し、全高が高く、全長が短い新しいプロポーションにもかかわらず、トップレベルの空力性能Cd=0.30を実現している。また、高張力鋼板の大幅採用などにより、高剛性かつ軽量なボディを実現し、低燃費を追求している。

THSだけでなく、多面的にエコロジーを追求

 空調システムはエアコンユニット内を上層と下層の二層構造にし、換気負荷を低減する内外気二層式オートエアコンを採用。さらに、断熱構造ボディ、UVカットグリーンガラスの採用等も加わりエアコン効率を高めている。

  • 内外気二層式オートエアコン
    内外気二層式オートエアコン
  • UVカットグリーンガラス
    UVカットグリーンガラス
低燃費タイヤ&軽量アルミホイール

低燃費タイヤ&軽量アルミホイール

 また、電動パワーステアリングの採用により、従来の油圧式に比べ約3%の低燃費を実現するとともに、転がり抵抗の少ない低燃費タイヤと超軽量設計のアルミホイールを採用することで、さらなる低燃費を実現している。

低燃費タイヤ&軽量アルミホイール

低燃費タイヤ&軽量アルミホイール

メッセージ性のある新鮮なスタイリング

 「新しい立体感の創造」をテーマにして、次世代を感じさせる斬新なモノフォルムシルエットをベースにデザインされた外観。特徴的なディテール処理が随所に施されている。フロントは、スラントした短いフードに大型縦基調のクリスタル感のあるフロントコンビネーションランプと小型のフロントグリルを組み合わせた個性的なマスク。サイドは、モノフォルムシルエットをテーマに、先進性と独自性を打ち出したプロポーション。リヤは、リヤコンビネーションランプやバンパープロテクターをサイドへ回し込み、ワイド&ローの安定したイメージが特徴的だ。

メッセージ性のある新鮮なスタイリング

優れた操縦性・走行安定性と快適な乗り心地の両立

 フロントサスペンションはLアームマクファーソンストラット式サスペンションを新設計。ストラットにスタビライザーを装着することでロール剛性を高め、優れた操縦性・走行安定性と快適な乗り心地の両立を図っている。リヤは、新開発のイータビームサスペンション(トーコントロールリンク付トーションビームサスペンション)を採用。適切な前後剛性と高い横剛性を実現するとともにコーナーリング時のステア角を補正し、優れた操縦性・走行安定性を実現している。

優れた操縦性・走行安定性と快適な乗り心地の両立

センターレイアウトの次世代コクピット

 デジタルメーターやディスプレイをインストルメントパネル中央部に配置した次世代コクピットのプリウス。メーターは、視認性への配慮から、フードのない無反射デジタルメーター(反射率約0.1%)が採用されている。センターディスプレイには5.8型ワイドディスプレイが標準装備され、オーディオ画面(ラジオ・テープ)、車両情報画面(ハイブリッドエネルギーフロー、燃費&回収エネルギー情報)、AV調整画面(音質・画面調整)、FM多重放送(見えるラジオ)の4種類の画面選択が可能のほか、ウォーニング画面も表示される。操作面では、人間工学に基づいて開発されたインストルメントパネル出しのコラム式シフトレバーが採用されているほか、チルトレバー位置をコラム側面とすることで、着座姿勢を変えることなくチルト調整を可能にした。

センターレイアウトの次世代コクピット

 快適性でも、足踏み式パーキングブレーキ、コラム式シフトレバーの採用によりサイドウォークスルーを実現。また、花粉の除去が可能なクリーンエアフィルターを採用したほか、リヤヒーターダクトの標準設定により、リヤ席のヒーター性能がアップしている。

センターレイアウトの次世代コクピット

 また、6連奏CDチェンジャーも収納可能な5.9L大容量コンソールボックス、仕切り板を設定した6.3L大容量グラブボックス、センタークラスター部のマルチボックスなど収納スペースも豊富だ。

センターレイアウトの次世代コクピット

画期的な低燃費と排出ガスのクリーン化を実現

 トヨタハイブリッドシステム(THS)は、エンジンと電気モーターを組み合わせた新駆動システム。システム制御による高効率運転はもちろんのこと、加減速の多い市街地等の走行時でも回生ブレーキとエンジン停止システムなどの効果により、燃費を画期的に高め、10・15モード走行燃費で28km/Lという低燃費を実現。これは、従来のガソリンエンジン搭載のオートマチック車に比べ、約2倍の燃費性能であり、CO2の排出量を約1/2に削減した。また、同時にCO、HC、NOXを規制値の約1/10にして、排出ガスを一段とクリーンにしている。

 動力性能に関しても、加速時にはモーターによる駆動力のアシストを最大限に活用することで、従来のガソリン車並みの加速性能を実現している。なお、システム制御によって、バッテリーは一定の充電状態を維持するように制御されているので、外部からの充電は不要。従来のガソリン車同様、ガソリン給油のみでOKだ。

画期的な低燃費と排出ガスのクリーン化を実現

ハイブリッドシステム用に新開発された1.5Lエンジン

 エンジンは、新開発の1.5Lハイブリッド専用エンジン1NZ-FXE。エンジン性能は、最高出力58PS/4,000rpm。モーターによる駆動力のアシストが得られるハイブリッドシステムの特徴を活かし、高出力にこだわることなく熱効率を追求することにより、画期的な低燃費を実現。さらに、VVT-iの採用により、運転条件に応じてきめ細かく呼応させることで、高性能と低燃費の両立を図っている。

※VVT-i(Variable Value Timing-Intelligent : 連続可変バルブタイミング機構)

ハイブリッドシステム用に新開発された1.5Lエンジン

アクティブセーフティ(予防安全)

 ABSを標準搭載したのをはじめ、高いヒップポイントにより良好な視界を実現するとともに、インストルメントパネルの上面中央部にデジタルメーターを配置することで、優れたメーター視認性を実現。運転中の視線移動が少なく、ステアリング前方に配置した従来のメーターに比べ読み取り時間を短縮(シニアドライバーで約24%、ヤング・ミドルドライバーで約17%)している。

優れた視認性を実現したデジタルメーター

優れた視認性を実現したデジタルメーター

ハイマウントストップランプ

ハイマウントストップランプ

 さらに、薄型5灯のバルブ式ハイマウントストップランプをリヤウインドウ上端に装着し、後方車両からの被視認性に優れた配置にするとともに、薄型ランプとすることでリヤセンター席での頭上空間を確保し、良好な後方視認性も実現。加えて、運転席側のワンタッチ式パワーウインドウには挟み込み防止機構を採用し、作動時の安全性にも配慮している。

ハイマウントストップランプ

ハイマウントストップランプ

パッシブセーフティ(衝突安全)

SRSエアバッグ

SRSエアバッグ

 21世紀に向けて開発した軽量でありながら衝突安全ボディGOA※1基準をクリアする新プラットフォームの採用、さらに将来の米国の頭部衝撃緩和基準レベルの性能を追求した構造のインテリアなど、クラス世界トップレベルの衝突安全性を実現している。運転席・助手席には、SRS※2エアバッグを標準装着するとともに、追突された時に乗員の首への衝撃を緩和するWIL(Whiplash Injury Lessening : 頸部障害低減)コンセプトの新しいシート構造を採用。また、胸部への衝撃を緩和するプリテンショナー&フォースリミッター付シートベルトを運転席・助手席に標準装備、さらにリヤ席に3点式チャイルドシートをオプション設定している。

※1 GOA(Global Outstanding Assessment : 世界トップレベルの安全性評価)
※2 SRS(Supplemental Restraint System : 乗員保護補助装置)

SRSエアバッグ

SRSエアバッグ

エコロジー(環境への配慮)

バンパーにコーナーモール

バンパーにコーナーモール

 リサイクル性に優れた熱可塑性樹脂TSOP(トヨタスーパーオレフィンポリマー)をフロントおよびリヤバンパーの外装部品をはじめ、インストルメントパネルなどの内装部品にも積極的に採用。また、バンパーにコーナーモールを設定し、傷つきやすいコーナー部だけの交換ができるように配慮するとともに、バンパーにランプ類を取り付けない構成とし、リサイクル時の二次解体性を高めている。さらに、各部の防音材には使用済み車両のシュレッダーダストから再生した高性能防音材RSPP(Recycled Sound-Proofing Products)を採用。また、環境負荷物質低減の観点から、ワイヤーハーネスの電線被覆材および保護材は、鉛をまったく含まない新開発の材料を使用している他、フューエルタンクにも鉛を含まないアルミメッキ鋼板を採用している。

バンパーにコーナーモール

バンパーにコーナーモール

スペック

グレード プリウス
車両型式 HK-NHW10-AEEEB
重量(kg) 1,240
全長(mm) 4,275
全幅(mm) 1,695
全高(mm) 1,490
ホイールベース(mm) 2,550
エンジン型式 1NZ-FXE
エンジン種類 水冷直列4気筒横置DOHC
排気量(cm3 1,496
最高出力kW/(PS)/r.pm -/58/4,000
代表するグレードのスペックを表示しております。
エンジン最高出力はネット値です
このクルマの型式は、NHW10(1500)です。

21世紀の大きな一歩へ

 自動車が誕生しておよそ1世紀が過ぎ、有用な輸送機関として発達するとともに個人にとっても行動範囲を飛躍的に広げ、夢を与えてくれるものとなりました。
その一方で、資源・環境問題が発生し、深刻化の度合いを増しています。この環境変化にクルマも無縁ではありえません。プリウスは、トヨタが総力をあげて開発した、これからの社会変化を見据えた全く新しいクルマです。

 プリウスの商品コンセプトは、「必要十分なサイズで、クルマ本来の良さを備えるとともに、21世紀に向けての要件にも真正面から応える4ドア車」。具体的には、「これからのクルマのパッケージのあるべき姿を見つめ直した人に優しいパッケージ」、「新しいパッケージを包む先進的な内外装デザイン」、「資源・環境に配慮したハイブリッドシステム」の3本柱で開発に取り組みました。この小さなクルマが21世紀への大きな一歩になることを願っています。

初代プリウス チーフエンジニア 内山田 竹志

初代プリウス
チーフエンジニア
内山田 竹志