Sep. 27, 2017

7. 自動運転の構成要素

 

自動運転の技術基盤について

自動運転の機能は、運転環境を理解し、情報に基づく意思決定を行い、目的地まで安全に移動できるようにする、複数のシステムの相互に機能することにより成り立ちます。

  • ローカライゼーションとマッピングは、車両がどこに位置しているかを判定します。このシステムでは、ゼロから、もしくは既存の信頼性が高いとされている情報を基準に周辺環境の特殊な高精度のマップを作成し、その地図内で車両の位置を特定する技術を必要とします。このシステムは、センサーが収集したデータを、自動運転車が正確に判断することを支援します。
  • パーセプション(認識技術)は、カメラ、LIDAR(光を使った検出・測距技術)、レーダー、GPS(全地球測位システム)、慣性航法ユニット(INU)などを含む車両センサーのデータと「マッピングとポジショニング」システムから収集した情報を組み合わせ、車両の状況と周辺環境と位置関係情報を認識・判断します。これには、インフラ、車両、歩行者、自転車など、静的、動的あらゆる障害物の位置と動きが含まれます。このシステムは、解析に複雑かつ膨大な量のデータを要することから、自動運転の実現において最も難しいステップとなります。
  • プレディクション(予測機能)は、他の車両、歩行者、自転車等が現れそうな場合の自動画像化を支援します。複数のプレディクションが存在する場合もあります(これは、ハイポセシス(仮定)とも言われています)
  • プランニングは、どの車線を走行するか、他の走行車両などの移動体に対応しながら、どこへ移動させるか、障害物との間にどれだけ空間があるかといったことを緻密に判断し、一つないし複数の車両の安全な走行経路を決定します。プランニングシステムでは、路上の他の車両が視界から遮られたり、予想外の動きをしたりする場合など、不確実な状況下においても、安全に車両を誘導する方法を判断しなければなりません。複数のハイポセシスによって、他の車両、歩行者やその他の動きによって、複数のプランを提示し、最終的な選択肢を提案します。
  • コントロールは、絶えず更新されるリアルタイムデータを基にプランニングシステムが設定する想定進路を実際に走行することです。これは、車両走行機能に指示を出すアクチュエータを通じて行われます。
  • コーディネーションは、他の車両、道路のインフラ、およびクラウドデータベースと通信することです。
  • 外部ヒューマンマシンインターフェース(e-HMI)は、人と車両との間で、正確かつ確実な情報のやりとりができるようにします。走行制御の切り替えをする場合など、ドライバーと車両との間のコミュニケーションは特に重要ですが、他のドライバーや歩行者など車両とその外部にいる人間とのコミュニケーションも、同様に重要です。
自動運転の主要ツール

自動運転車を支える基盤は、一部重複しますが、以下の中核的な技術とツールによって実現されています。

  • 人工知能(AI)は、情報処理により、特定のある目標達成のために意思決定を行う技術を指す広義の用語です。これは、法則をベースにしたシステム(例えば自動運転車が一時停止の標識をセンシングし、あらかじめプログラムされた停止の命令に従うなど)を介して行なわれる場合や、自転車とクルマを区別するためにシステムが大量の情報処理と解析を行うマシーンラーニングを介して行われる場合があります。
  • コンピュータビジョンは、センサーから情報を収集し、それを用いて周辺の環境をセンシングするプロセスです。このプロセスでは、人工知能を活用してデータから知識を抽出し、自動車、歩行者、並木、道路などの様々な個々の要素を識別します。
  • 予測アルゴリズムは、走行中の他の自動車の道路上の予想位置を現在の走行経路および、それ以外の付近の車との距離感に基づいて割り出すなど、道路環境上の他の障害物の予想される動きを予測するために使用されます。
  • 意思決定アルゴリズムは、道路上の他の車両がとると予測された動きに基づいて、自車の適切な経路を選択する際に使用されます。意思決定アルゴリズムは、視界の良し悪しや渋滞など、不確実な状況であっても正しく作動しなければなりません。
  • マップは、車両が置かれた実際の空間のベースとなる情報です。マップには、ある環境内に車両が入ると使用が開始されるタイプの既成のHDマップと、SLAM(Simultaneous Location and Mapping)などのアルゴリズムを使用してリアルタイムで生成されるHDマップの両方が含まれます。
  • センサーは、運転環境または車両自体からデータを収集します。センサーには、ビデオカメラ、LIDAR、RADARなどの外部環境に関するデータを収集するシステム、GPSなどの位置を追跡するもの、慣性計測ユニットや車輪速、角度モニターなど車両自体の動きを監視するものがあります。
  • アクチュエータは、車両の物理的な操作、スロットルバルブの開閉、車輪の回転、またはブレーキの制御に使用されます。自動運転車の動作の多くはコンピュータによって非常に高速度で実行されますが、アクチュエータの作動は、車両のダイナミクス(動き)およびアクチュエータ自体の速度といった物理的制約によって制限されます。そのため、自動運転システムでは、コマンドの発信と車両の物理的応答(車両が実際に動くこと)との間の時間差を考慮する必要があります。
  • シミュレーションは、自動運転ソフトウェアの性能を仮想環境でテストするために利用されます。実走行でのテストから集められたデータは、システムの対応や適切に作動しているかを確認するためのシミュレーションにおいて、様々な交通状況を再現するために利用されます。
  • V2X通信は、DSRCにより直接通信が可能な車車間(V2V:vehicle to vehicle;車両同士)、路車間(V2I:vehicle to infrastructure;車両と道路インフラストラクチャー間)、歩車間(V2P:vehicle to pedestrian;車両と歩行者間)と、携帯ネットワークを利用して情報配信を行う車-ネットワーク間(V2N:vehicle to network)の通信形態があります。これらの車車間(V2V)、路車間(V2I)、歩車間(V2P)通信は、目視や車載センサーだけでは確実な認識が困難な交通信号、標識、路面状態、他車両、歩行者に関する情報を共有し、運転者に接近してくる車両、周辺の歩行者、赤信号、前方の停止低速車両の存在などを喚起してくれます。V2N通信は、地図情報の生成、更新、各種情報の配信、遠隔操作等に活用されます。V2X通信は、車載センサーからのデータと組み合わせることで、周辺の状況を把握し、自動運転車両の制御、交通安全と効率性、そして運転者とのやりとりに際して、より優れた意思決定を可能にします。