Sep. 27, 2017

6. 自動運転技術開発のストラテジー

 

トヨタの指針となる開発理念 : 「Mobility Teammate Concept」

トヨタの自動運転技術の開発理念は、人とクルマが同じ目的で、ある時は見守り、ある時は助け合う、気持ちが通った仲間(パートナー)のような関係を築くという、「Mobility Teammate Concept」(MTC)というものです。

MTCは、自動運転技術、ドライバーの能力、運転環境の難しさにかかるトヨタの自動運転の全ての研究にかかわるコンセプトで、人とクルマが同じ目的を目指し、ある時は見守り、ある時は助け合う、気持ちが通った仲間のような関係を築くという、トヨタ独自の自動運転の考え方です。完全自動運転が実現する当面の間は、これは、安全運転のために人と機械が持っている異なるスキルを活用するアプローチです。実際、インターネット接続されたシステムやクラウドベースの技術等により、人と機械が責任を分かち合う知能化したクルマが、各ドライバーの運転経験を活用し、性能向上し続けていくことを意味しています。MTCでは、技術の進歩に伴って、(身体の不自由などの理由により)そもそも安全な運転が困難な人を含め、個々のドライバーの能力に基づいて、車両による支援の適応と範囲を拡大していきます。

MTCは、人間は選択の自由を与えられるべきだという信念に基づいて構築された理念です。自動運転技術の恩恵も享受しながらも、人々が自分で運転したい時には、安全に楽しく、自由に運転できるようにすることがMTCの考え方なのです。実際、MTCの概念では、高速道路や長距離旅行などの状況でショーファーモードを選択したり、低速や短距離走行時といった状況下では、ガーディアンモードの技術による運転のサポートを受けたりと、個人が選択できるようになっています。

最後になりますが、MTCは人とクルマのインタラクションだけに着目しているのではなく、クルマと運転者の関係を越え、より広い意味での安全とコミュニケーションをも展望しています。完全自動運転化された車両や、歩行者、自転車走行者、他の車両など、道路の他の利用者とのインタラクションも考慮したコンセプトです。

自動運転技術の開発戦略

パーソナルユースの車両

2003年、トヨタはミリ波レーダーを利用したプリクラッシュセーフティシステム(PCS)を市販車に初搭載しました。同システムはその後、プリウスのような、量販車にも導入されました。先進技術をまず開発し・導入し、それを普及技術として量販車へ展開していくというやり方が、トヨタの戦略です。この2軸のアプローチは自動運転技術にも適用されます。これは、あらゆる面で、先進的な安全システムの延長線にあるものであり、また、交通事故死傷者ゼロを目指すという究極的な目標にも沿ったものです。

パーソナルユースの車両

この成果は、日本、米国、欧州において、先進予防安全パッケージの「Toyota Safety Sense」と「Lexus Safety System +」が、トヨタとレクサス車のほぼ全てに搭載されていることをみれば、明らかです。実際、研究開発の進展に伴い、両システムとも、将来的にはより広範な安全・自動運転システムと技術を採用し、設定を拡大していく予定です。

最初にパーソナルユースの車両に先進技術を導入していくこの取り組みは、安全性の向上、事故や交通量の削減に役立つ先進システムの導入をスピードアップさせるため、有効な技術開発の仕組みとなっています。今日では、部品およびITの急速な発展に伴い、量産車への展開をより早くすることができるようになりました。

トヨタは、短期的には、まず、自動運転機能を備えたシステムを市場に送り出すことに取り組んでいます。これには、既に予定されている、以下の2つの車両システムが含まれます。

2020年の実用化を目指す「Highway Teammate」(ハイウェイ チームメイト)は、運転者の監視の下、高速道路で自動運転できるようにするものです。このシステムは、高速道路の走行中に、交通状況を評価して判断を下し、必要な操作を行います。高速道路への合流、レーンチェンジ、車線・車間維持、分流などが機能として含まれます。

Highway Teammate

2020年代前半に実用化を目指している「Urban Teammate」(アーバン チームメイト)は、同様の機能を一般道で利用できるようにするものです。車両周辺の人、自転車などを検知可能にするほか、このシステムは地図データや交差点や交通信号の視覚データを利用し、その地域の交通規制に従って走行するように開発されています。

Urban Teammate

サービスとしてのモビリティ(Mobility-as-a-Service : MaaS)

独自のプログラムや、MaaS分野の様々な企業とパートナーシップを組むことで、トヨタは、MaaSの市場や可能性を、積極的に模索しています。こうしたプラットフォームは、自動運転技術の発展を加速するものであり、運転することができない人々に恩恵をもたらすことができます。

MaaSは自動運転システムの開発に際して、中核をなす技術を向上させるために、大量のデータが必要になるという重要な課題とも関わってきます。初期の部品のコストが高いということは、自動運転システムを備えた車両の価格は高く、販売台数も少ないということを意味しています。さらに、パーソナルユースの車両の使用率は低いため、提供させるデータも比較的少ないことになります。MaaSによって、このような費用は、より分散され高い利用率によって、データも多く集めることができます。

トヨタは、MaaSによって提供される自動運転システムは、乗客1人あたりの1マイルあたりの走行コストを低下させ、新たな消費者需要の波を生み出し、そこからモビリティ、安全性、利便性が向上していく好循環が生まれると考えています。この変化は、結果的に、自動運転車の技術の発展、社会や消費者への普及をもたらすことになります。総合的に考えると、MaaSは、クルマの個人所有だけの状態よりも、自動運転がもたらす、重要な恩恵をより早くもたらします。

自動運転のみに限らず、モビリティサービスは、トヨタはお客様に提供できるサービスを広げる機会を提供します。このため、トヨタは、他の様々なサービス提供者と協力できるように、Mobility Service Platformを作りました。