一般財団法人トヨタ・モビリティ基金(Toyota Mobility Foundation、以下「TMF」)は、WRI India*1と共同で、インドの地下鉄が効率的で魅力的な移動手段となるよう支援し、移動時間の短縮、道路混雑の緩和、大気汚染の低減を図ることを目指したSTAMPプロジェクト(Station Access and Mobility Program)を2016年より7都市(ベンガルール、ハイデラバード、コチ、ムンバイ、プネ、ナグプール、デリー)において展開。今回、プロジェクトの終了にあたり、インドの地下鉄のアクセス向上に関する調査をまとめた提言書を発表しました。

*1 WRI India(ワールド・リソース・インスティチュート インディア)
WRIは、ブラジル、中国、ヨーロッパ、インド、インドネシア、メキシコ、米国に拠点を持ち、50カ国以上で活動している非営利団体。450人以上の専門家等が、様々な組織や団体と協力し、地球環境保護に関する各種取り組みを推進しています。WRI Indiaは、政府、企業、市民、非政府組織等と協力し、インドにおける緊急かつ重要な4つの課題である急速な都市化、エネルギー需要の拡大、気候変動への対応、大規模な天然資源汚染の解決に向けて活動しています。

「インドの地下鉄のアクセス向上に関する提言書」の主な内容

ベンガルール、ナグプール、デリーの3都市のプロジェクト(7,200名)を通じた主な調査結果

地下鉄利用者の年齢層

地下鉄の主な利用者は、通勤・通学のために利用する18歳から35歳の年齢層ということが判明しました。また、複数の自家用車を所有する富裕層は、あまり地下鉄を利用していないことも明らかになりました。

図1 : 地下鉄利用者の年齢分布

ラストマイル(「駅と目的地」間)の交通手段

地下鉄利用者がラストマイルの移動手段として、徒歩や「パラトランジット」*2と呼ばれる低コストのライドシェアを好むことが判明し、3都市ともその割合は75%以上を占めています。このことは、低コストのライドシェアと歩行者インフラ(横断歩道、信号など)がラストマイル接続の改善のために重要な役割を担っていることを示しています。

*2
パラトランジット
鉄道・バスなどの大量輸送機関とタクシー・自家用車などの個別輸送機関の中間に位置する交通機関の総称。デマンドバス、乗合タクシー、マイカーの相乗りシステム等
図2 : ラストマイル交通手段の比率

ジェンダーの移動パターンに配慮した高頻度のライドシェアサービスと運賃体系

特に女性の通勤者はラストマイルの局面における待ち時間が一定時間を超えると、利用者が大きく減少することが明らかになりました。ラストマイルの接続には、高頻度のライドシェアが重要であることを提言しています。さらに、ラストマイルにおいて、高い割合で女性はより短い待ち時間や安全を重視するために、運航頻度の高いバスより運賃の高いライドシェアなどの移動手段を選ぶことや、一連の移動の間に買い物や子供の送迎など複数の用事を済ませることが多いため(「トリップチェーン」)、個々の移動距離が短く、それぞれの運賃体系が高いために、全体では負担が大きくなっています。このことから、ジェンダーに配慮した移動パターンに対応できる運賃体系が必要であることが判明しました。

図3 : 高頻度のバスを利用できる利用者が少人数輸送のライドシェアを選択した場合の男女別待ち時間
表1 : 男女別平均移動距離と運賃

地下鉄駅へのアクセス時間

地下鉄利用者は、ラストマイルの交通手段の待ち時間を含めて、駅へのアクセス時間は最大20分までが許容範囲であることが判明しました。この数値は、調査都市や所得層を問わず一貫しており、「地下鉄駅への乗り入れが可能なエリア」は、固定された地域よりもアクセス時間によって決まることが明らかになりました。

ラストマイル接続の問題に対する提言

この調査により、ラストマイル接続への非効率的なアクセスが、地下鉄利用の低下に影響を与えていることが明らかになり、この問題に対処するため、主に下記内容を提言として取りまとめました。

  • 調査結果で判明したように、ラストマイル接続をより迅速化し、待ち時間の短縮、平均速度の向上につながる仕組みの導入により、効率的に「地下鉄駅への乗り入れが可能なエリア」を拡大することが重要。
  • インドの通勤者のニーズに対応したライドシェアなどのモビリティシェアサービスを設計するために、さまざまなラストマイル路線における通勤者の人口統計、移動パターン、需要量について定期的で確実なデータ収集・分析また、関係機関との共有が必要。
「提言書」
Improving Metro Access in India, Evidence from Three Citiesの全文はこちら(英語のみ)

STAMPプロジェクト

STAMPプロジェクト公式webサイト(英語のみ)
https://wricitiesindia.org/STAMP/

トヨタ自動車は創業以来、お客様、ビジネスパートナー、従業員、そして地域社会等、全てのステークホルダーを尊重しながら、自動車を通じた豊かな社会づくりを目指して事業活動を行なっています。そして、より公益的な活動を行うことを目的に、2014年8月、TMFを設立しました。

TMFは、誰もが自由に移動できるモビリティ社会の実現に向け、幅広いプロジェクトを通じて世界中の移動課題の解決に取り組んでいます。今後も、トヨタグループが事業活動を通じて培った技術やノウハウを活用し、多様なパートナーとの協働を通して、国連が定めるSDGs(持続可能な開発目標)の考え方にも沿った活動を進めながら、人々が心豊かに暮らせる社会の実現に向けて貢献していきたいと考えています。

以上

Sustainable Development Goals

トヨタは、革新的で安全かつ高品質なモノづくりやサービスの提供を通じ「幸せを量産する」ことに取り組んでいます。1937年の創業以来80年あまり、「豊田綱領」のもと、お客様、パートナー、従業員、そして地域社会の皆さまの幸せをサポートすることが、企業の成長にも繋がると考え、安全で、環境に優しく、誰もが参画できる住みやすい社会の実現を目指してきました。現在トヨタは、コネクティッド・自動化・電動化などの新しい技術分野にも一層力を入れ、モビリティカンパニーへと生まれ変わろうとしています。この変革の中において、引き続き創業の精神および国連が定めたSDGsを尊重し、すべての人が自由に移動できるより良いモビリティ社会の実現に向けて努力してまいります。

SDGsへの取り組み
https://global.toyota/jp/sustainability/sdgs/

今回の取り組みを通じて特に貢献可能なSDGsの目標

  • 産業と技術革新の基盤をつくろう
  • 住み続けられるまちづくりを
  • 気候変動に具体的な対策を
  • パートナーシップで目標を達成しよう

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