クロード・モネ《ヴェネツィア、サン・ジョルジョ・マッジョーレ》
1908年,油彩、カンヴァス,60 × 73 cm,個人蔵/ Photo: Phillips, Fine Art Auctioneers, New York, USA / Bridgeman Images

エピローグ日没、光と影

モネは、同じ対象を繰り返し見つめ、描くことで、光と大気によって刻々と変化する世界を捉えようとしました。1899年から1901年の間に3回訪れたロンドンでは、産業化によって汚染された大気とテムズ河に立ちこめる霧のなか、国会議事堂、ウォータールー橋、チャリング・クロス橋をさまざまな時刻や天候のもとで描きました。とりわけ夕暮れの作品では、沈みゆく太陽が霧と水面を赤や紫に染め、建築物の輪郭を揺らめく色彩のなかへ溶け込ませています。

1908年に初めて訪れ、最後の制作旅行となったイタリアのヴェネツィアでも、運河沿いに建つ歴史的な建築物、水上に浮かぶように建つ宮殿や聖堂などを描きました。日没の光を受けた建築物は、水面の反映と重なり、現実の風景と実体のない映像との境界が次第に曖昧になります。そこでは、対象の形を正確に再現することよりも、光が生み出す色彩の響きと、風景が移ろう一瞬を捉えることが重視されています。

夕暮れは一日の終わりであると同時に、光が最も劇的に変化する時間です。風景が夕映えのなかへ静かに溶けていくその瞬間には、自然の移ろいに美を見いだし、一瞬の輝きを描きとどめようとしたモネのまなざしが息づいています。

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