
クロード・モネ《印象、日の出》
1872年,油彩、カンヴァス,50×65cm,マルモッタン・モネ美術館、パリ/ Bridgeman Images
プロローグ日の出
本編は、クロード・モネの《印象、日の出》から始まります。19世紀後半のフランスでは、国家が主催するサロンと呼ばれる展覧会が画家の評価や作品の販売を左右していました。しかし、モネ、ルノワール、ドガ、ピサロ、モリゾといった当時の若い画家たちは、伝統的な主題や仕上げを重視するサロンの審査制度から距離を置き、自ら作品を発表する場を求めます。
1874年、彼らはパリの写真家ナダールのかつてのスタジオで、最初の自主展を開催しました。 そこに出品されたモネの《印象、日の出》は、霧に包まれたル・アーヴルの港の光と大気の揺らぎを、素早い筆触と鮮やかな色彩で捉えた作品です。批評家のルイ・ルロワは、この作品を「印象を描いているに過ぎない」と揶揄しました。当初は、未完成にも見える粗描きの表現や身の回りの日常的な主題が激しい批判を受けましたが、画家たちは、やがてこの呼称を自ら掲げるようになります。
個性や制作理念を異にする彼らを結びつけたのは、共通の様式というより、既存の制度に頼らず作品を発表する独立の精神でした。この自主展は1886年までに全8回開催され、印象派は近代美術の展開を切り開く存在として、次第に評価を確立していきました。