葛飾北斎《冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏》
1830-32年,木版多色刷,25.4 x 38.1 cm,The Howard Mansfield Collection, Purchase, Rogers Fund, 1936,メトロポリタン美術館、ニューヨーク

歌川広重《東海道五拾三次之内 日本橋》
1833-34年、あるいはそれ以降,木版多色刷,23.8×36.2 cm,ブルックリン美術館、ニューヨーク/ © Brooklyn Museum / Gift of Dr. and Mrs. Maurice H. Cottle / Bridgeman Images

喜多川歌麿《高名美人六家撰 富本豊雛》
1795-96年,木版多色刷,39×25.8 cm,ミネアポリス美術館/ National Institutes for Cultural Heritage

第5章浮世絵:江戸の美と新たな視覚表現

モネをはじめとする印象派の画家たちが、近代の暮らしや身近な自然を新たな絵画の主題としたのに対し、日本の浮世絵は、それよりはるか以前から、同時代の人々の生活や風俗、旅、四季の風景を描いてきました。浮世絵は、江戸時代に発達した絵画や木版画で、「浮世」と呼ばれた同時代の人々の暮らしや風俗、娯楽を主題とする芸術です。版元、絵師、彫師、摺師の協働によって生み出され、多くの人々に親しまれた身近な芸術でした。

葛飾北斎は《冨嶽三十六景》において、信仰の対象である富士を、働く人々や旅人の暮らし、各地の気象と結びつけ、多様な視点から捉えました。歌川広重は《東海道五拾三次》などで、街道を行き交う旅人と各地の名所を描き、雨や雪、夕暮れといった季節や時刻の変化を詩情豊かに表しています。喜多川歌麿は、女性の上半身を大きく捉える大首絵を発展させ、装いや容貌だけでなく、手紙を読む、身支度をするといった日常のしぐさに、その人物の感情や気配を映し出しました。 画面の大胆な切り取り、斜め上からの視点、平面的な色彩などによって日常の一瞬を際立たせる浮世絵は、西洋の芸術家たちに、世界を捉え直す新たな視覚の可能性を示したのです。

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