2016年12月06日
トヨタ自動車、TNGAによりエンジン・トランスミッションなどを一新し、
スムースでキビキビとした“思いどおり”の走りを追求
-優れた低燃費も実現。車両搭載を拡大しCO2排出量削減を推進-
- 基本性能を徹底的に見直し、優れた走行性能と高い環境性能の両立を追求。
特に走行性能は、「ダイレクト&スムース」を開発テーマに、“トヨタの走りを変える”ことにチャレンジ。 - 2021年には、トヨタの車両販売台数の60%以上に拡大(日本・米国・欧州・中国が対象)。CO2排出量は15%以上*1削減。
トヨタ自動車(株)(以下、トヨタ)は、「いいクルマづくり」の構造改革「Toyota New Global Architecture(TNGA)」により、エンジン・トランスミッション・ハイブリッドシステムを一新し、優れた走行性能と高い環境性能の両立を追求し、大幅に進化させた。この新型パワートレーンは、2017年以降、搭載車種を一気に拡大していく。
トヨタは、TNGAにより、クルマを骨格から変え、低フード化・低重心化・運動性能の向上を図り、クルマの基本性能である「走る」・「曲がる」・「止まる」をレベルアップさせるために、プラットフォームを中心に全面的に見直し、2015年発売の4代目プリウス以降、新プラットフォームの採用拡大に取り組んでいる。同時に、クルマの中核となるパワートレーンについても、低重心化とともに、優れた走行性能と高い環境性能を両立させた新型の開発に取り組んできた。
今回新開発したパワートレーンは、軽量・コンパクト化、低重心化、エンジンの高速燃焼、トランスミッションの多段化・高効率化など基本性能を徹底的に見直すとともに、こうして実現した基本骨格を統一化するためにモジュール設計(統一設計)を行い、今後の「素」のいいクルマづくりの基盤となる。
新型パワートレーンは、高い環境性能はもちろんのこと走行性能においては、“トヨタの走りを変える”ために「ダイレクト&スムース」をテーマに、重点的に開発に取り組んだ。
トヨタが考える「いいクルマ」の原点ともいえる「Fun To Drive」すなわち、乗って楽しいワクワクする走りのフィーリング、ドライバーの意のままに反応する走行性能と優れた低燃費など環境性能の両立を追求している。この新型パワートレーンにより、動力性能を約10%*2向上させながら、燃費は約20%向上させている。これは、パワートレーンによる寄与分であり、車両搭載時は、空力性能、軽量化など車両トータルでの進化により、さらに、動力性能・燃費の向上を図ることができる。
エンジンポテンシャルを最大限引き出すために、TNGAにより基本骨格を一から考え直し、構造・構成を刷新することにより高い走行性能と環境性能を両立させた新型エンジンを「Dynamic Force Engine」と称し、今後もさらに進化させていく。
このほど開発した新型エンジンは、高速燃焼技術、可変制御システムの採用のほか、排気・冷却・機械作動時などの様々なエネルギーロスを少なくして熱効率を向上させるとともに高出力を両立している。新開発の2.5Lガソリン車用エンジン・ハイブリッド車(HV)用エンジンは、それぞれ、世界トップレベル*3の熱効率40%・41%を達成している。同時に、緻密な制御による高レスポンス化と全速度域での高トルク化など、多くの新技術の採用により全面的に見直し、大幅に進化させている。
エネルギーロスを最小限にし、伝達効率を高めるためにギヤやクラッチなどに様々な対策を施した。ギヤは、歯面の摩擦係数を低くする新たな加工を施して、ギヤが噛み合う時のエネルギー伝達ロスを削減し、クラッチは、機構内の摩擦材形状を最適化し、回転時のクラッチの損失トルクを約50%低減(従来型6速AT比)するなど世界トップレベル*3の伝達効率を達成している。さらに小型軽量化により車両燃費を向上させるとともに、低重心化により直進およびコーナリングの走行安定性を向上させている。
さらに、ギヤをワイド化するとともに、高性能・小型トルクコンバーターを新開発し、ロックアップ領域を拡大した。これにより、アクセル操作に素早く、滑らかに反応することで、ドライバーの思いどおりに反応するダイレクト感あふれる走りを追求した。
また、Direct Shift-10ATは、8速から10速に段数アップしてトータルのギヤ数を増やしながら、低中速域を中心に、各段の使用領域(段数)を最適化するクロスギヤを採用。これにより、FRプレミアム車にふさわしいスムースかつ世界最速レベル*3のクイックな変速が生み出すリズミカルで“気持ち良い走り”を追求。
こうして、走りにおいては、日常の市街地走行を中心に高速走行まで、お客様にしっかりと実感いただける実用的な走行シーンでの基本性能を高めている。発進や前車に追従走行している時は、アクセル操作にスムースに反応するため、思いどおりにクルマが走行し、追い越しの時は、素早く、強いアクセル操作にも遅れることなくドライバーのイメージどおりにリズミカルに加速していく。
4代目プリウスに採用された小型・軽量・低損失化技術を継承し、2.5Lエンジン用ハイブリッドシステムを一新するとともに、FR用の高性能マルチステージTHSⅡを新開発した。
2.5LのTHSⅡは、小型・軽量・低損失化技術と、TNGAによる新型エンジンの高い燃焼効率と高出力とのシナジー効果により、優れた動力性能・低燃費を高次元で追求している。
マルチステージTHSⅡは、ハイブリッド車の走りのイメージを一新する高い発進加速性能とダイレクト感溢れる走りを実現。高速走行時のシステム効率の向上に加え、高車速域でもエンジン間欠運転を可能にすることで高速燃費を向上している。
プラグインハイブリッドシステムも一新した。従来のモーター走行に加え、これまで発電機として使用していたモーターを、走行用としても使用するデュアルモータードライブシステムにより、力強いEVモード走行を実現している。また、大容量のリチウムイオン電池の採用により、プリウスPHVのEV走行換算距離(EV走行距離)を60km以上*4と大幅に延ばしている。
新型パワートレーンは、TNGAによるクルマづくりにより、基盤技術の開発効率と品質の向上を実現しており、良品廉価な商品を一気に展開することが可能となる。これは、「もっといいクルマ」をお客様に早くお届けするとともに、環境に優しい低燃費車の普及促進にもつながる。
2021年までの5年間で、エンジンは、今回開発した2.5Lガソリンエンジンを含め、9機種・17バリエーション、トランスミッションは、多段化AT、新機構の無段変速機(CVT)など4機種・10バリエーション、ハイブリッドシステムは、6機種・10バリエーションの投入を予定している。
このようにトヨタは、今後、TNGAによるモジュール開発により、短期間で多くの機種を展開し、搭載車種は、2017年発売の新型車を皮切りに順次拡大する。当面、5年後の2021年には、トヨタ単独の年間販売台数(日本・米国・欧州・中国)の60%以上を目指していく。
これにより、2021年のトヨタ単独販売車からのCO2排出量の削減効果は、新型パワートレーンの燃費向上寄与分だけでも、15%以上*1を見込んでいる。
パワートレーンカンパニーの開発体制も見直し・強化を進めていく。現在市場の大多数を占める自動車は従来型エンジン車であり、今後さらなる普及が進むHVやプラグインハイブリッド車(PHV)もエンジンを有している。当面の間主流となるエンジン・トランスミッションの開発促進に加え、車両電動化の推進に向けて、モーター・バッテリー・パワーコントロールユニット(PCU)などのハイブリッド技術(電動化技術)の開発を加速していく。
- 技術共有によるグループ総力のレベルアップ
- トヨタは従来より、主要な技術・システムは、「自社での内製により手の内化」することを基本姿勢として研究・開発に取り組んでいる。自社開発で知見・ノウハウ・経験を蓄積することにより、「今日の失敗を、明日の改善」に結び付けることができ、トヨタの研究・開発の進化を支えてきた。ハイブリッドシステムの開発や世界初の量産型HV「プリウス」の発売、いち早く市販を実現した燃料電池自動車(FCV)「MIRAI」の開発などは、長年の取り組みの成果であると考えている。
- しかし、今後、CO2排出量削減に向けてこれまで以上のペースで電動化技術の開発・商品展開を進めていくためには、これまでと同様にトヨタのリソーセスで全て対応していくことは難しい。引き続き、トヨタ独自で保有すべき技術を厳選して「内製化・手の内化」しながら、今後は、グループ内で技術共有を進め、共同開発分野を拡大する。グループ横断的な大部屋による共同開発を強化し、グループ内でのリソーセスを効率的に活用して高い技術の早期確立を図り、「3(スリー)アップ」、すなわち、「グループ総力のレベルアップ」「開発のスピードアップ」「普及・拡大によるスケールアップ」を目指していく。
- 電動化のコア技術であるハイブリッド技術の開発体制強化
- ハイブリッド技術の基幹となるモーター・バッテリー・PCUなどは、PHV・FCV・EVといった電動車両の基幹技術でもある。今後の車両電動化を支え、「環境技術開発のコア技術」と言えるハイブリッド技術の開発スピードを加速するために、ハイブリッド技術開発の人員を増強する。具体的には、2017年から体制の見直しを進め、2021年までの5年間で、ハイブリッド技術開発者の約30%増強を計画している。その後も、開発状況に応じて順次強化していく予定である。
トヨタは、地球環境保全に資するために「2050年の新車CO2排出量90%削減(2010年比)」を目指し、環境対応技術開発の基本方針である「省エネルギー」の考えのもと、エンジン・トランスミッションの進化とHV・PHVの普及により、CO2の排出量削減に向けた燃費向上を推進する。同時に、将来を見据え、石油を中心とした化石燃料の消費抑制を視野に「エネルギー多様化への対応」のために、水素を活用するFCVやEVといったゼロエミッション車の開発を進め、さらなるCO2排出量削減に向けて、「エコカーは普及してこそ環境への貢献」の視点から、環境対応技術の開発とエコカーの市場導入に取り組んでいる。
今後も、TNGAによる「いいクルマづくり」により、「Fun To Drive」と「地球環境への貢献」を両立する「もっといいクルマ」の市場投入とCO2排出量削減を加速するために、トヨタグループの総力を結集して取り組みを強化していく。
*1 | 2015年にトヨタが販売した新車1台あたり平均の走行時のCO2排出量に対する2021年の削減率。日本・米国・欧州・中国が対象。CO2排出量は、各国・地域の認証データを使用した新型パワートレーンの寄与分のみの試算。 |
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*2 | ガソリンエンジン車は時速0マイルから60マイル、ハイブリッド車は時速40kmから70kmまでの加速時間。 |
*3 | 2016年11月現在。トヨタ調べ。 |
*4 | 開発目標値(JC08モード)。トヨタ測定値。 |
以上
別紙
トヨタは、「省エネルギー」を進めながら、「燃料多様化への対応」を加速し、さらなるCO2排出量の削減に向けて、グループ一体となって取り組んでいきます。
各国で燃費規制の強化が進み、多くの自動車メーカーが、PHVやEVなど電動車両の商品展開を進める中で、トヨタは、化石燃料を消費する従来型のエンジンやトランスミッションの進化に取り組んでいます。
この理由は、CO2排出量削減を着実に進めるためです。
1997年、トヨタは世界初の量産型HV「プリウス」を発売しました。以来約20年になろうとし、日米欧を中心に徐々に普及してきていますが、グローバルではまだ普及というレベルには至っておりません。
日米欧を中心に投入されたPHV・EVの普及もこれからです。
市場の大多数は従来型のエンジン車であり、ガソリン・軽油といった化石燃料を大量に消費し、依然として、多くのCO2を排出し続けています。
CO2の排出量が少ない、あるいは排出量がゼロの電動車両の普及が進み、CO2排出量の削減効果が表れるまでには、まだかなりの時間を要すると考えられます。
しかし、地球温暖化の進行にストップをかけるために、原因の一つとされるCO2の排出量削減は、喫緊の課題です。
当面、市場の大多数を占める自動車は従来型のエンジン車であり、今後さらなる普及が進むHVやPHVにもエンジンがあります。
このように、今後も長い間、化石燃料が自動車燃料として使い続けられる状況を考えると、エンジン・トランスミッションの環境性能が向上すれば、車両台数の普及と相まって、CO2の排出量削減が一段と進みます。
従来型パワートレーンの技術開発は、CO2排出量削減に向けて、「確実・着実・現実的で、実行効果が期待される取り組み」であると、トヨタは考えています。
HVやPHVの普及によるCO2排出量削減のさらにその先に求められることは、CO2の排出量ゼロです。FCVやEVといったゼロエミッション車の普及が必須です。
これは、自動車用燃料として化石燃料以外の水素や電気を使うことであり、新たなパワートレーンとして、燃料電池(FC)システムやモーター・バッテリーPCUなどの電動化の技術開発が求められるということに他なりません。
トヨタは、化石燃料に替わる自動車用燃料としては、水素と電気が有力であると考え、走行中にCO2を排出することなく、環境貢献効果の大きいFCV・EVといった、ゼロエミッションカーの開発、市場導入を進めていきます。
各国・地域のエネルギー事情、燃料インフラ整備状況、お客様の嗜好などの市場環境を踏まえ、FCV・EVの棲み分けを図りながら普及に取り組み、CO2排出量のさらなる削減を目指しています。
しかし、「燃料多様化」への道のりは容易ではありません。自動車のみの対応では、実現できません。
お客様に安心して新しい燃料のクルマに乗っていただくための、燃料の供給インフラの整備が不可欠です。
エネルギー会社にとっては、新たな投資が必要となります。政府・自治体による支援も欠かせません。
新しい燃料に対する社会・お客様の理解も必要です。長年、慣れ親しんだガソリン・軽油といった燃料とは違い、充填する場所・充填にかかる時間・充填方法・価格など多くのことが異なるからです。
今使っていただいているクルマへの燃料充填と同じ利便性があるとは限りません。お客様の「価値観の多様化」が求められます。
特にFCVは、水素という普段の生活の中ではほとんど接することがない燃料を使います。
水素は、様々な一次エネルギーからも作ることができるため、環境効果のみならず、エネルギーセキュリティの面からも将来的に活用が見込まれる有力なエネルギーです。
水素を化学反応させて発電し、CO2を出さずに走行するFCVは、「究極のエコカー」として高いポテンシャルがあり、トヨタは20年以上も前から開発に取り組んでいます。
しかし、水素に対する社会・お客様のご理解、水素ステーション整備などの課題があります。FCVの普及、「水素社会」の実現にはまだ時間を要します。
そこでトヨタは、いち早くFCVの市販化プロジェクトに取り組み、2014年の日本での「MIRAI」発売を皮切りに、米国・欧州での発売を実現したのです。チャレンジしたのです。
これが、「水素が当たり前の社会」「FCVが普通のクルマ」になるまでの、トヨタの長いチャレンジの始まりです。