この記事は以下のような人にお勧めです。

障がいによりお体が不自由な方で、運転免許の取得を考えられている方、そのご家族

「運転免許を取得したい!けれど、何から始めて良いか分からない」「誰に相談すれば良いのか、そもそも自分は免許を取得できるのだろうか…」これらは障がいのある方が運転免許を取得しようとした時、初めに直面する疑問ではないでしょうか。

今回はそんな運転免許の取得方法について、障がい者の免許取得に詳しい一般社団法人日本作業療法士協会の藤田先生にお話を伺いました。

一般社団法人日本作業療法士協会 藤田先生
一般社団法人日本作業療法士協会 藤田先生

-運転免許を取得するための制度に関して教えてください

藤田先生
自動車の運転免許証を取得する方法は、大きく2つに分けられます。
1つ目は、各都道府県警察の「運転免許試験場」に行き、そこで直接、仮免許試験、本免許試験、学科試験を受ける方法です。
2つ目は「指定自動車教習所」を卒業して免許を取得する方法です。指定自動車教習所では、定められた学科および技能を修得して卒業することで、運転免許試験場での「適性試験」と「学科試験」のみの合格で運転免許を取得することができます(技能試験が免除される)。
今回は「指定自動車教習所」に通う前提でお話しします。
新規で免許を取得するための方法
新規で免許を取得するための方法

-「障がい」といっても様々な障がい種別があります。まずはどこに相談に行けば良いのでしょうか?

藤田先生
まずは、都道府県警察の窓口である安全運転相談(#8080)へ電話で相談すると安心です。また、安全運転相談(適性相談)は、各都道府県の免許試験場(免許センター)にご連絡いただくとスムーズです。

-免許取得前に知っておいた方が良いことはありますか?

藤田先生
障がいの程度により、免許取得費の助成を受けられる場合がありますので、お住まいの自治体に制度を確認すると良いでしょう。例えば、『障害者自動車運転免許取得費助成事業』という制度では、各都道府県公安委員会が指定した自動車教習所で免許を取得する場合に、技能教習に要する費用の3分の2(上限10万円)を助成してもらえます(2024年7月現在)。
また、『自動車改造費の助成』などもありますので、まずはお住まいの自治体にどのような制度があるのか、ご自身が対象かどうかを事前にご確認ください。なお、適切な申請期間に申請しないと助成金を受け取れない場合があるので注意が必要です。
助成内容(2024年7月現在)自治体や障がいの程度によって助成の内容が異なる
助成内容(2024年7月現在)
自治体や障がいの程度によって助成の内容が異なる

-運転免許取得前に行う警察の適性検査はどのような内容でしょうか?

藤田先生
道路交通法の規定する欠格事由(運転免許取得が不可になる身体状況)に該当するかを検査します。
また、試験の内容は、疾患や障がいの程度によって異なります。代表例としては、ハンドル操作やブレーキ・アクセル操作のテストが挙げられます。具体的な適性検査の内容は各都道府県警察へご確認ください。
適性検査で用いられる機材の一例
適性検査で用いられる機材の一例

-適性検査に合格した後の流れを教えてください。

藤田先生
適性検査後の警察の指示に従い、各都道府県が指定する自動車教習所へ相談します。運転補助装置が必要とされた場合は、下記の方法があります。
  1. 補助装置付き教習車がある教習所で受講する
  2. ご自身で補助装置付き車両(助手席用補助ブレーキを含む)もしくは運転補助装置を用意し、教習所へ持ち込んで受講する
また、入所して困ることとしては、トイレや教室、教習所への通学方法なども挙げられます。教習所への相談の際には、ご自身の障がいの程度で入所後困ることがないか確認しましょう。

-免許証取得までに多くの方がつまずきやすいハードルを教えてください。

藤田先生
第一のハードルとしては、教習所に入所することです。そもそも受け入れ教習所が近隣にないこと、障がい者への指導経験が豊富な教習所や運転補助装置付きの教習車がどの教習所にあるのかが公開されていないなどがその理由です。
また、技能教習で指導する側としても、教習所職員がそもそも運転補助装置や指導方法に慣れていないことが多く、難しさを感じるようです。

-教習所へ通学する中で、受講者側にできることはあるのでしょうか?

藤田先生
困りごとや不安なことなどを教習指導員としっかり話し合うことが重要だと思います。
また、運転免許を取得するまでには、教習期限(9か月)や仮免許の有効期限(6か月)があるため、障がいや疾患の状況が安定しない方は、入所前に体調を整えておくこと、なるべく間を空けずに集中して通学することを意識されると、期限に追われずに安心です。

-本日は大変貴重なお話をありがとうございました。

執筆者

トヨタ自動車株式会社 社会貢献推進部

参考情報

一般社団法人 日本作業療法士協会

警察庁「安全運転相談窓口について」