一般財団法人トヨタ・モビリティ基金(Toyota Mobility Foundation、以下「TMF」)は、タイ運輸省、バンコク首都圏庁、警察庁、チュラロンコン大学などのパートナーと共に、2019年より、タイの首都バンコクのラマ4世通りにおいて、移動データやAIを活用した渋滞緩和の実現を目指した「ラマ4プロジェクト」を展開しておりましたが、約3年半にわたるプロジェクトの終了にあたり、これまでの結果を発表しました。

2015年から2年間実施しました第一弾「サトーンプロジェクト」に引き続き、第二弾として、更に効果的な交通管理のためには、科学的で正確なデータの把握が必要という認識のもと、バンコクでもとりわけ渋滞問題が深刻なラマ4世通りにおけるプロジェクトを立ち上げました。このプロジェクトでは交通渋滞の緩和を目指し、チュラロンコン大学と共同で、「人を中心としたデータソリューション」をテーマに、研究・検証を進めてきました。その結果、渋滞対策には、データから得る知見に加えて、利用する人間の意見も踏まえたソリューションが大切であることを明確にしました。実施内容やプロジェクトの結果を交通警察やバンコク首都圏庁などと共有し、加えて交通渋滞緩和のためには、広範囲かつ継続的にデータを共有・活用することが重要であるとの提案を行いました。

実施事項・主な結果

  1. 交通データの視覚化

  • CCTV-AI、Bluetoothセンサー、NDRセンサーなどの設置。
  • 取得データをベースに走行速度、渋滞、所要時間、出発・到着地を視覚化する「ダッシュボード」を開発。
  • ラマ4世通りの12ヶ所に「交通指令室」を設置し「ダッシュボード」や関連データ、カメラ映像を監視し信号変更タイミングや事故処理など交通管理に関する適切な判断をリアルタイムで実施。
    CCTV-AI、Bluetoothセンサー
    車両数、車両の平均速度、渋滞の密度や長さ、右・左折の回数を計測。
    NDRセンサー
    道路上の車両の位置などを測定。
Bluetoothは、Bluetooth SIG, Inc.の登録商標です

  1. 交通渋滞や事故の根本的な原因の特定

データより交通渋滞が頻発する3ヶ所を特定し、分析。

  1. 大規模小売店所在地区での実証

  • 交通誘導員による横断歩行者の整理。
  • バイクタクシー駐車位置の変更。

実証結果として混雑時の歩行者道路横断時間の短縮や車両交通流の改善を確認。
これを踏まえバンコク首都圏庁に当該地区での交通整理、信号機設置、バイクタクシー駐車場の変更案などを提示。

  1. 環状道路交差点での渋滞頻発地区での知見共有講習会の実施

  • 交通管理と信号制御のより効果的な実施を目的とし警察署間での交通データ連携・利用を強化するため知見共有講習会を大規模に開催。あわせて「交通指令室」の紹介、交差点への信号機設置案を提示。

  1. 立体交差点周辺でのCCTV-AI設置

  • ラマ4世通りにある「日・タイ橋」付近でのAIを搭載したCCTVを設置し、早期に事故を検出、最寄り交通警察に警報を発し迅速な対応を実現。

結果のまとめと提案

人を中心としたデータソリューションの共有・活用を提案

このプロジェクトを通じて、人を中心としたデータソリューションがバンコクにおける渋滞対策に大きな可能性があることを明確にしました。信号のタイミングや公共交通機関のスケジュールやルートなどの交通インフラの設計をサポートできる履歴データを利用したり、リアルタイムのデータを適切に視覚化することで、事故の予防などをサポートできることも認識できました。

この研究・検証結果を踏まえて、交通渋滞緩和のためには、より広範囲かつ継続的にデータを民間または公的機関と共有・活用することが重要であるとの提案を交通警察や、バンコク首都圏庁に行いました。

このプロジェクトで得られた研究結果は、関心のあるステークホルダーと共有することを目的に、電子ブックとして公開。また、ラマ4プロジェクトにより導入された12カ所の交通指令室モニター設備などは交通警察に寄付され、今後もバンコクの渋滞解消に向けてこのデータマネージメントが活用されることが期待されます。

  • ラマ4プロジェクトの電子ブック(タイ語のみ)
    ラマ4プロジェクトの電子ブック(タイ語のみ)
  • ラマ4プロジェクト最終発表イベント(2023年4月25日 バンコク)
    ラマ4プロジェクト最終発表イベント(2023年4月25日 バンコク)

トヨタ自動車は創業以来、お客様、ビジネスパートナー、従業員、そして地域社会等、全てのステークホルダーを尊重しながら、自動車を通じた豊かな社会づくりを目指して事業活動を行なっています。そして、より公益的な活動を行うことを目的に、2014年8月、TMFを設立しました。

TMFは、誰もが自由に移動できるモビリティ社会の実現に向け、幅広いプロジェクトを通じて世界中の移動課題の解決に取り組んでいます。今後も、トヨタグループが事業活動を通じて培った技術やノウハウを活用し、多様なパートナーとの協働を通して、国連が定めるSDGs(持続可能な開発目標)の考え方にも沿った活動を進めながら、人々が心豊かに暮らせる社会の実現に向けて貢献していきたいと考えています。

以上

Sustainable Development Goals

トヨタは、革新的で安全かつ高品質なモノづくりやサービスの提供を通じ「幸せを量産する」ことに取り組んでいます。1937年の創業以来80年あまり、「豊田綱領」のもと、お客様、パートナー、従業員、そして地域社会の皆さまの幸せをサポートすることが、企業の成長にも繋がると考え、安全で、環境に優しく、誰もが参画できる住みやすい社会の実現を目指してきました。現在トヨタは、コネクティッド・自動化・電動化などの新しい技術分野にも一層力を入れ、モビリティカンパニーへと生まれ変わろうとしています。この変革の中において、引き続き創業の精神および国連が定めたSDGsを尊重し、すべての人が自由に移動できるより良いモビリティ社会の実現に向けて努力してまいります。

SDGsへの取り組み
https://global.toyota/jp/sustainability/sdgs/

今回の取り組みを通じて特に貢献可能なSDGsの目標

  • すべての人に健康と福祉を
  • 住み続けられるまちづくりを
  • 気候変動に具体的な対策を

関連コンテンツ