皆さん、こんにちは。トヨタ自動車、GAZOO Racingの友山です。
本日は、ご多忙の中、お集まり頂き有難うございます。
昨年は、TOYOTA GAZOO Racingにとって、実り多き年となりました。
ダカールラリー総合優勝を皮切りに、FIA世界耐久選手権(WEC)では、チームタイトル、ドライバーズタイトル獲得に加え、ル・マン24時間レース(以下、ル・マン)2連覇を達成しました。
そして、FIA世界ラリー選手権(WRC)ではドライバーズタイトルを獲得、一昨年のマニュファクチャラーズタイトルに続いて、2年連続のビッグタイトルとなりました。
国内のSUPER GT、スーパーフォーミュラ、全日本ラリーにおいてもシリーズタイトルを獲得し、国内外において、「モータースポーツのトヨタ」を、強く印象付けることが出来たと思います。
本年も昨年同様、GAZOO Racingは、レース、ラリー活動に力を入れて参ります。
まず今シーズンは、既に、来週ゴールをむかえるダカールラリーが始まっていますが、ル・マン優勝の立役者となったフェルナンド・アロンソが、今度はTOYOTA ハイラックスでダカールに参戦しています。
昨年優勝のナッサー・アル-アティヤと伴に、彼の挑戦にもご注目頂きたいと思います。
次に、シーズン真っ只中のWECですが、厳しいサクセスハンディキャップを背負いながらも、なんとか表彰台にかじり付いて来ました。
今シーズンはTS050での最後の参戦となりますが、ル・マン3連覇で有終の美を飾り、来シーズンから始まるハイパーカークラス*1に投入する、新型マシン、GRスーパースポーツ*2に繋ぎたいと思います。
また、すでに発表した通り、そのロード・ゴーイング・バージョンの市販も視野にありますので、ぜひご期待下さい。
さてWRCですが、エース、オィット・タナックがライバルチームに移籍すると言うニュースが流れた際、多くのファンの皆様に、「トヨタのWRCはどうなるんだ!」とご心配をおかけしましたが、皆さんもご存知のように、WRC界のスーパースター、セバスチャン・オジエが加入し、体制を一新して来シーズンに望みます。
本日、午後の部で新チームのお披露目を予定しておりますので、ぜひ、再度、ご来場頂きたいと思います。
国内モータースポーツ最大のトピックスは、なんと言ってもGRスープラGT500のSUPER GTデビューです。
現在、新型マシンのテストが着々と進んでいますが、初戦からライバル相手に大暴れし、新たなるスープラ伝説を打ち立てて参りたいと思います。
GRヤリス
我々、TOYOTA GAZOO Racingは、モータースポーツで鍛えられたノウハウと人材で、世界に通用する市販スポーツカーを世に出す、と宣言して参りました。
その第一号として、昨年、17年ぶりに、スープラをGRブランドで復活させました。発表直前に、ほとんどノーマルのプロトタイプが、ニュルブルクリンク24時間耐久レースで完走した事実が証明するように、その走行性能は目を見張るものがあります。
そして昨年末に、そのGRスープラが、ドイツで最も権威のある「ゴールデンステアリングホイール賞」を受賞しました。自動車王国ドイツで、しかもスポーツカー部門において、あのBMWやポルシェを抑えての受賞は、GRが本場欧州で認められた証であると、大変嬉しく思っております。
GRスープラがレースから生まれたスポーツカーだとするならば、TOYOTA GAZOO Racingは、ラリーからはどんなクルマを生み出してくれるのか?…多くのファンが心待ちにしていることでしょう。
中でもWRCは、市販車ベースの車両で、お客様が普段使う一般道で行う競技であり、世界中のあらゆる道を疾走する過酷なレースであります。
まさに、モータースポーツを、人を鍛え、クルマを鍛え、「もっといいクルマづくり」の基盤に据える、という我々の理念を実現していくには、最高のバトル・フィールドと言えます。
ご来場の皆様、そのWRCから生まれた、戦うための4WDスポーツ、GRヤリス、別の名を、ヤリスGR-FOURをご紹介したいと思います。
(GRヤリスのお披露目)
いかがでしょうか?
「BORN FROM WRC!」
このクルマのコンセプトは明快です。一言で言うなら、「ラリー王国トヨタを不動のもとするウエポン」であります。
2014年夏のフィンランドで、モリゾウこと社長の豊田は、トミ・マキネンと意気投合し、WRC参戦を決意しました。そして2016年の秋、そのテストカーを試乗した豊田は、世界ラリーで通用する市販4WDスポーツ、しかも、次期WRカーのベースとなり得る、市販車の開発に着手するよう指示を飛ばしました。
セリカGT-FOUR以来、20年振りの本格的4WDスポーツ車の開発!と皆意気込んだものの、実は、トヨタには、もはやそのノウハウも、経験技術者もなく、手探りの出発となりました。
最初の試作車は、曲がらない、曲がらない…と思ったら、いきなりスピンする、おまけにピットに戻って来るや否や、オイルが逆流して煙がモクモク…。
正直、これは大変なことを始めてしまったな!と思いました。
それでも、どうすれば意のままに操れるスポーツ4WDが出来るのか…、エンジニアから、テストドライバー、プロドライバー、そしてこの私も一緒になって、試行錯誤しながら仕上げて参りました。
実は、まだマスタードライバー、モリゾウからは合格点をもらっていません。
発売ギリギリまでたゆまぬ改善が続けられています。
午後のトークショーでは、ここでは語りきれない苦労話を、関係者が熱く語ってくれると思います。
何れにしましてもGRヤリスは、従来のトヨタ車では考えられない、“スーパー・ホットハッチ”となりました。
コンパクトな1.6リッター・ターボエンジン、272馬力のパワーを伝達する新開発のフルタイム4WDシステム「GR-FOUR」…、それを支える足回りは、リヤに専用のダブルウィッシュボーンを奢り、なんとトレッドは86よりワイドになっています。
また、フロントフード、左右のドアパネル、バックパネルはアルミ製、ルーフにはカーボンを採用し軽量化を図ると同時に、バッテリーをリヤに配置するなど重量配分にも気を配りました。
GRヤリスの戦闘能力を強調しましたが、実は、GRヤリスは、多くのお客様に「クルマを操る楽しさを教えてくれる」そんなクルマでもあります。
「このクルマなら、今まで走ったことのない雪道を走ってみたい、ラリーに挑戦してみたい」と言うように、お客様の心に「FUN TO DRIVE AGAIN」の想いを呼び覚ましてくれることでしょう。
ここで、モリゾウからのメッセージをご紹介したいと思います。
モリゾウのメッセージにもありましたように、市販車を改造してレースに出すのではなく、始めからレースに勝つための市販車を開発する、という発想で造ったクルマが、このGRヤリスであります。
GRファクトリー
そして、それはクルマの開発プロセスのみならず、製造ラインのあり方にも大きな変革を促しました。
トヨタはこのGRヤリスを機に、スポーツカーを生産するGR専用ライン、GRファクトリーを新設しました。
このファクトリーは、複数のセルをAGVで繋ぐ、コンベアレスのボデーと組立ラインで構成されています。これにより、スポーツカーには不可欠なボデーの高剛性化と、超高精度の組み付け作業が可能となりました。
また、少量生産車にありがちな変種、変量にも、生産性を落とすことなく対応可能となりました。
このファクトリーには、トヨタ全社から熟練工が集められ、技能伝承の場としても活用されます。
大量生産から、造り手の意志がこもった、多品種少量生産へ…、GRは新しいモノづくりのあり方にも、果敢に挑戦しているのです。
“First Edition”予約受付開始
さて、このGRヤリス、本日がワールドプレミアとなりましたが、既に予想以上の反響を頂いております。
販売開始は本年夏頃を予定しておりますが、その反響にお応えすべく、本日より、国内では先行予約を受け付けたいと思います。
こちらに展示したモデル、実は、これはホイールやリアスポイラーなど各所にマットブラック塗装を施した期間限定の発売記念モデルであります。
この限定車は、本日より6月30日(火)まで、TOYOTA GAZOO RacingのWEBサイトにてご予約を受け付けます。
ご予約いただいた方へは、先行試乗会へのご招待や、スペシャルグッズのプレゼントを予定しております。
少しでも早く手に入れたいという方、また、この機会に“First Edition”を手に入れたいという方は、ぜひお早めにご予約頂きたい思います。
最後に
GRヤリスは、かつてWRC黄金時代を築いたセリカGT-FOUR以来20年ぶりの4WDスポーツ、しかもWRCホモロゲーションモデルであります。
このCASE*3の時代に、そんなスポーツカーを開発する必要はあるのか?と言う方もいるかも知れません。
先日の東京モーターショーで、社長の豊田はこう訴えました。
「未来のモビリティー社会では、クルマは、もはや所有するものではなくなってしまうのか?
答えはNOだ。共有するモビリティーがあるからこそ、人々はよりパーソナルなモビリティーを求めるようになる」、そう言って、未来のパーソナル・モビリティー、e-RACERを紹介したのです。
パーソナルなモビリティーに不可欠なものは何か…、安全、環境性能はもちろんですが、忘れてならないのは、「Fun To Drive」ではないでしようか。
どんな時代になっても、少しでも遠くに、自由に、早く、かっこよく移動したい、という人間の欲求は普遍的なものであり、それを満たしてくれるクルマに対する人々の感情は、何か熱く、心ときめくものがあります。
クルマは乗るものじゃなく、操るものなんだ。
GRヤリスは、その忘れかけていた喜びを呼び覚ますために生みだされたクルマです。
折りしも今年は、WRCラリー・ジャパンが開催されます。その歴史的イベントに相まって、このGRヤリスをトヨタの新たなる「Fun To Drive」の幕開けにしたいと思います。
次の100年も、クルマが、子供たちの心をときめかせる存在であり続けるために、TOYOTA GAZOO Racingの挑戦は続きます。これからも、皆様のご支援、ご協力をよろしくお願い致します。
ご清聴、ありがとうございました。
*1 | Le Mans Hypercar(LMH)クラス |
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*2 | 仮称。GRスーパースポーツ(仮称)をベースとするハイブリッド・プロトタイプ車両 |
*3 | Connected(コネクティッド)、Autonomous(自動化)、Shared(シェアリング)及びElectric(電動化)の頭文字を取った略称 |
以上