2020年2月6日、決算発表の場で、副社長のディディエ・ルロワが「お客様に向き合った競争力強化の取組み」と題したプレゼンを実施し、販売面での競争力強化に向けた各地域の取組みについて説明しました。
ルロワは「トヨタの副社長ディディエ・ルロワ、世界で進める現地現物」(19年2月掲載)でもご紹介したように、現地現物・TPSを徹底しており、世界中のステークホルダーを訪ねては、現場の方々の本音に向き合っています。決算でも、お客様の声に耳を傾け、お客様のニーズに応える商品・サービスをご提供していく具体的な取組みについて説明しました。
みなさん、こんにちは。ディディエ・ルロワです。
まず始めに、私どものクルマをご愛顧いただいている世界中のお客様、一人ひとりのお客様へ笑顔をお届けするためにご尽力いただきました、販売店、仕入先の皆様に、深く感謝申し上げます。
また、日頃よりトヨタを支えていただいております、株主の皆様やビジネスパートナーの皆様をはじめ、全てのステークホルダーの皆様に、厚く御礼申し上げます。
本日は、当社が販売面の競争力強化に向けた各地域の取組みについて、ご説明させていただきます。
バランスよい事業展開
2019年のトヨタの販売台数は、971万台となりました。グローバルの自動車市場は縮小し、競争環境は厳しい状況でした。そうした中でも、私たちの販売は前年・計画のいずれも上回りました。
2019年、アジアの販売は米中貿易摩擦の影響もあって落ち込みましたが、中国や欧州、日本といった他の地域が補いました。
このように、トヨタの成長は、グローバルでバランスの取れた事業を展開する戦略によって支えられています。こうした戦略の結果、私たちのグローバル販売は安定的に成長しています。
お客様に向き合った活動-中国
ここからは、私たちがどのように「お客様に向き合った」活動をしているかについて、各地域の取組みを通じてご紹介します。
中国では、2019年は市場が8%減少する中、販売台数を9%増加させました。新型カローラ・レビンの好調な販売による効果がその一因です。TNGAプラットフォームにより、走行性能が格段に向上しました。
販売店では、販売員一人ひとりがクルマの魅力をお客様にお示しし、試乗を通じてその魅力を体感いただけるように注力しました。
「お客様に向き合った活動」の一環として、中古車価格が下がらないように、安易な値下げもしませんでした。こうした活動により、お客様には、クルマの品質の高さや燃費効率、性能に加え、リセールバリューも魅力に感じていただけるようになりました。
一昨年、李克強首相が来日されて以降、中国政府はトヨタの環境技術に関心を寄せていただいています。パートナーシップを大切にしながら、私どもの技術を活かし、中国の発展のお役に立ちたいと考えています。
お客様に向き合った活動-欧州
欧州では、長年の取組みが実りました。
将来、環境規制のさらなる強化が見込まれる中、お客様のハイブリッド技術へのニーズを先読みして対応することにしました。しかし、それは極めて根気のいる選択でもありました。
欧州市場はディーゼルが主流、お客様にとってハイブリッドは未知の技術でした。まず、私たちは販売店にハイブリッド技術の優位性を理解してもらいました。燃費、静粛性、耐久性、ランニング費用などです。お客様にうまくお勧めできるよう、販売員はハイブリッド技術をゼロから学びました。お客様はハイブリッド技術の優位性に少しずつ気付き始めました。そして、そのお客様がハイブリッド技術の優位性を広めていく役割を果たしてくれました。
かつてはハイブリッド技術を誤解する人たちがいました。「壊れたら修理しにくい」「充電が必要」といった誤解も徐々に払拭されていきました。
私たちは真摯にお客様と向き合い、その声を吸い上げて、一歩一歩進んできたのです。ハイブリッドへの移行は、そうしたコツコツとした取組みによって導かれた結果です。現在、欧州でトヨタ車・レクサス車を購入いただくお客様の半分以上の方々にハイブリッド車をお選びいただいており、それが欧州の販売全体を押し上げています。
お客様に向き合った活動-北米
北米でも、私たちの戦略は、お客様にしっかりと向き合うことにあります。
北米における、RAV4のハイブリッド比率は13%程度でした。私たちは、お客様、販売店の意見を聞く、詳細な調査を行い、ハイブリッド車にパワーの面で劣るイメージがあることを認識しました。そうした事実を踏まえ、今回の新型RAV4の販売開始にあたって、燃費の良さと走行性能をより強く打ち出していくことを決めました。
その結果、RAV4ハイブリッドに「パワフル」な印象を持つお客様の比率が、27%から38%まで伸びました。RAV4ハイブリッドの販売も伸び、現在のRAV4モデルでは、ハイブリッドの占める割合が25%まで向上しました。
私たちはどの地域にもハイブリッド車を普及させて、環境サステナビリティに貢献したいと考えています。お客様の声に耳を傾け、お客様のニーズに応える電動車をお届けしてまいります。
お客様に向き合った活動-日本
日本では販売店ネットワークの変革を進めています。未来に向けた挑戦であり、従来の考え方だけにとらわれては進められません。お客様がクルマに求めるものも変われば、販売の在り方もおのずと変わります。
その変革の中、私たちは日本の全ての販売店で、トヨタの全てのクルマをご提供できるようにする取組みを導入しようとしています。当初は2025年に向けて導入する予定でした。しかし、「この町いちばん活動」を強化し、地域のニーズや困りごとに幅広く応えていくには、早い段階から様々な商品・サービスを扱う必要があります。そこで、私たちも当初の予定から2年前倒し、今年の5月に開始することを決めました。
私は販売店の代表者の皆様にお会いし、「何でも話してほしい」とお願いし、取組みに対する本音の意見や懸念を話してもらいました。多くの販売店の方が、人気車種の供給が追い付かなくなることに不安を訴えました。私たちは、生産体制の調整を行い、今できる備えを着々と進めています。
計画や前例にとらわれず、将来の成長の種を蒔くことを通じて、これからもお客様に選んでいただけるトヨタになれるよう、私たち自身を変えていこうと決めたのです。
Be Passionate, Create Passion
各国、各地域で、販売に携わるトヨタの従業員が、自分の持ち場で、1台でも多く売ろう、1円でもコストを下げようと、販売活動に取り組んでいます。彼らは仲間たちが直面している販売の苦しさも理解しています。販売に苦戦する地域があれば、自分の地域で挽回しようと考える。「自分以外の誰かのために」という精神は、全世界のトヨタに根付いています。
私は多くの地域を訪れ、数多くのステークホルダーにお会いしています。私が常に胸ポケットに入れているカード、(取り出して)こちらは私自身が「リーダーシップの10要素」をまとめたものです。この中でも、特に現場で会った方に伝える言葉があります。“Fighting Spirits”(戦う精神)と“Be Passionate!”(情熱的であれ)という言葉です。
私たちは100年に1度と言われる大変革の波に直面しています。あらゆる手段・努力を尽くし、お客様が求めるモビリティやサービスを提供し続けなければ、生き残ることはできません。お客様の笑顔のために、“Fighting Spirits”と情熱を持って、私たちは全力で戦い続けます。
最後に
最後になりますが、ご存知の通り、1月に米国のCESで、社長の豊田が、“Woven City”プロジェクトを発表しました。
このプロジェクトは“Living Laboratory”であり、未来に向けたスタート地点にすぎません。近く、このプロジェクトに関する情報をお届けできると思います。
ご清聴ありがとうございました。