2024年11月01日
意外な悩み!?車いすユーザーはどうやってクルマへ乗り込むの?
この記事は以下のような人にオススメです
- 日常的に車いすを使用されている方や、そのご家族
- 身体に障がいがあり、クルマ選びに迷われている方や、そのご家族
この記事のポイント
- 障がい、車いす、クルマの種類によって乗り方が異なる
- 車いすからクルマへの乗り降りは、焦らず少しずつ練習することが大切
- クルマへの乗り降りには便利なアイテムが色々ある
車いすを利用する方々にとって、クルマへの乗り降りは大きな悩みのひとつです。
今回は、車いすユーザー3名のリアルな体験談をもとに、実際に車いすユーザーがクルマの乗り降りにかかる時間や普段の工夫、さらに日常で感じる悩みについてご紹介します。
トヨタループス(株)のメンバー
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- 村瀬さん(外傷性脊髄損傷)
ルーミー(コンパクト)
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- 尾島さん(脳性麻痺)
ルーミー(コンパクト)
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- 山口さん(二分脊椎症)
ノア(ミニバン)
車いすユーザーの「クルマの乗り降り」
-本日はよろしくお願いします。まずは皆さんがどのようにクルマに乗り降りしているか教えてください。
- 村瀬
- クルマへの乗り降りの方法は、自分の脚で立てるかどうかで変わります。
僕は立位ができないため、まず運転席に乗り込み、運転席に座った状態で車いすを畳んで後部座席に収納します。
- 車いすからクルマに乗り込む様子(村瀬さん)乗り込むまでにおよそ1分程度かかる
(この動画には音声がありません)
- 村瀬
以前はコンパクトカーのヤリスに乗っていました。
しかし、運転席の後ろがスライドドアではなかったので、運転席に移乗し、膝に車いすを持ち上げて後席に積み込んでいたんです。そのときは、車いすのタイヤが汚れていると服が汚れたり、車いすを頭上で通す際に砂利や雨水が頭に降ってきたりしました。当時それがすごくストレスでしたね。
今乗っているルーミーは、運転席側の後席がスライドドアになっています。そのため、頭の上を通さなくても、外から車いすを直接収納できるようになりました。
車いすをオートボックス(屋根上への車いす収納装置)でなく、車内に乗せる人は、運転席の後ろにスライドドアがあるかどうかを確認した方が良いと思います。それから、車いすを積み込む際、車いすをクルマに近づけてから乗せます。その際、車いすがクルマのボディに当たって傷がついてしまうことがあります。
そのため、カバー(写真1)をカー用品店などで購入し、傷の対策をしています。
- 写真1 市販品の傷を防止するためのカバー
車種を変更してもそのまま付け替えて使用できる
- 尾島
- 私は、クルマに乗り込むのに最短でも5分くらいかかります。
つかまり立ちであれば立位が可能なのですが、手や脚に力が入りづらい症状があります。そのため車いすを持ち上げて、トランクに積むことができません。
同じく車いすユーザーの友人と一緒に出かける際は、友人の座席のスペースを確保するため、トヨタの福祉車両 ウェルキャブシリーズの車いす収納装置(写真2)は必須です。
- 写真2 車いす収納装置(旧型ウェルキャブ)
希望の車種に合わせ、販売店や専門架装メーカーと相談の上で車いす収納装置を選べる
- 尾島
- この装置があれば、私でも重い車いすを1人でクルマに積み込むことができ、友人とのお出かけも自分たちの力で楽しむことができます。
しかし、車いす収納装置にも課題があると思います。車いすを積み込む際、車いすの背中の部分が地面に擦れて、車いすが傷ついてしまうことがあります。
- 山口
- 僕は尾島さんと同様に、つかまり立ちをすれば車いすから立ち上がることが可能です。
そのため、車いすから立ち上がり、そのままクルマへ積み込むことができます。大体20秒程度でクルマに乗り込むことができます。
- 写真3 立ち上がって車いすを積み込む様子(山口さん)
同じ車いすユーザーでも、村瀬さんとは大きく異なる乗り方なのが分かる
- 山口
- 普段は、ミニバンのノアに乗っています。
僕の車いすは畳むことのできない製品なのですが、ノアは大きなクルマなので、しっかり収納できるのが良いですね。
クルマを選ぶときに、使っている車いすをどう積み込むかをイメージすることが大切だと思います。
- 筆者
- 車いすユーザーは皆さん同じ乗り方をされているのかと思っていました。
障がいの種類や車いすの種類、車種によっても皆さん乗り方やサポート用品が全く異なりますね。
一緒に見ておきたい動画
今回ご紹介した以外にも、様々な車いすの積み込み方があります。
この動画でも分かりやすく説明されていますので、ぜひご覧ください!
慣れないうちに苦労したこと
-ここまでクルマに乗る様子を見せていただきました。クルマには最初からスムーズに乗り込めたのでしょうか?
- 村瀬
- 僕は、慣れないうちは難しかったです。
特に、初めての乗り降りの際は、クルマと車いすの距離感を掴むことが難しく、苦労しました。車いすを積み込む際にクルマのハンドルに当たって汚れたり、間違えてクラクションを鳴らしてしまったりしたことも度々ありました。
また、車種や車いすを新しくするたびに、積み込みの感覚が変わるので、今でもそういう新調のタイミングでは毎回苦労するんです…。クルマの乗り降りが大変な方は、初めは急がずに練習をして、少しずつ慣れていくことが大切だと思います。
日常生活で避けられない悩み
-日常生活で、特にクルマの乗り降りが大変なシチュエーションはありますか?
- 村瀬
- 雨の日は、車いすも自分も濡れてしまうことが多く、普段以上にクルマの乗り降りが大変です。
特に、雨の日は車いすが濡れていて、積み込む際に滑って車いすを落としてしまうリスクがあります。そのため、自分が濡れることよりも、そちらにすごく気を遣いますね。
- 山口
- そうそう、基本はもう諦めて濡れるしかないと思っています。
ただ、やはり雨で濡れるのは嫌なので、天気の悪い日は外出を控えますね。
- 尾島
- 私も雨の日はクルマへの乗り降りが大変です。
私の場合は乗り降りに最低5分かかってしまうので、クルマから降りたときには全身ずぶ濡れなんてことも…。
また、私は手に力が入りづらい症状なので、強風の日は運転席のドアにとても気を遣います。クルマの乗り降りの際、ドアに手を挟まれたことや、ドアが突然閉じて頭を打ったことも何度もありました。隣のクルマにドアをぶつける心配もあるので、強風の日は本当に注意して乗り降りしています。なので、運転席のドアがスライドドアだったらいいのにと考えることがよくあります。
それから、車いすマークの駐車スペースが満車で停められないときは、通常の駐車スペースを使わなければなりません。ただ、私は運転席のドアを健常者以上に開けなければうまく乗り降りをすることができないんです。通常の駐車場に停める場合、隣のクルマとのスペースがないのでドアを十分に開けることができないため、運転席から出られないんです。そのときは、後部座席まで四つん這いで移動して、後ろのスライドドアから出るようにしています。これが結構大変で…。
- 山口
- 車いすユーザーにとって車いすマークの駐車スペースって本当に大切なんですよ。
車いすマークの駐車スペースはドアがしっかり開けられるよう、広く設定されています。
それから、車いすユーザーにとって「屋根付きの駐車場」は、雨に濡れる心配もなくゆっくり安全にクルマに乗り降りするために重要なんです。
- 筆者
- 車いすを使用されている方は、多くの苦労や工夫をして乗り降りされているのですね。
クルマの乗り降りは買い物や病院など、日常のあらゆる場所で発生します。
やはり車いすマークの駐車スペースは、本当に必要な人が使えるように譲り合いの精神が大切ですね。
-本日はありがとうございました。大変勉強になりました。
この記事では、3人のユーザーの体験談をもとに、乗り降りの様子や悩みについて紹介しました。車いすユーザーにとって、クルマへの乗り降りは日常生活の中で大きな悩みのひとつです。それぞれの工夫から、ご自身に合った方法やクルマを見つけるヒントになれば幸いです。
また、車いすユーザーが移動しやすい社会に向け、まだまだ知られていないマナーをご紹介。
こちらもぜひチェックしてみてくださいね!
執筆者
トヨタ自動車株式会社 社会貢献推進部
参考情報
有限会社フジオート
株式会社ミクニ ライフ&オート
トヨタウェルキャブ