アソビと余白から見るWell-Being
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誰もが、今よりもっと笑顔で幸せに暮らせる。そんな未来に少しでも貢献するために、トヨタ自動車株式会社は「幸せの量産」をミッションに掲げ、モビリティ・カンパニーとしてクルマづくりにくわえて、もっといいモビリティ社会、まちづくりに挑戦しています。この挑戦を一歩でも進めるために、2021年よりトヨタ自動車株式会社 未来創生センター(以下、トヨタ)、株式会社豊田中央研究所(以下、豊田中央研究所)、Toyota Research Instituteの研究者が「Emotional Well-Being研究会」を立ち上げました。本研究会では、「幸せとは?」、「Well-Beingとは?」という簡単には答えの見つからない問いに対して、各界の有識者との対話を通じてWell-Beingを様ざまな角度から議論します。その内容を私たちトヨタグループだけではなく、もっと多くの皆様と共有することで、私達が未来社会で暮らす人びとのWell-Beingのために何ができるのかを考えるきっかけにしたいと考えています。

第1回Emotional Well-Being研究会 実施レポート 多様性と多元性から見るWell-Being

第1回研究会では、「多様性と多元性から見るWell-Being」と題して生物学と臨床心理学の観点から議論を行いました。一人ひとりにとってのWell-Beingが多様であることが、集団としてのWell-Beingにつながること。多様であるがゆえにお互いをケアすることが大切であるという気づきを得ました。

ところで、自分以外の誰かにとってのWell-Beingとは何か、その人は今Well-Beingだろうか、思うようにならないと調子を落としていないかを、私たちは気づくことが出来ているでしょうか?自分以外の誰かに心を配る余力や、相手の気持ちを受け取る余白がWell-Beingに重要なのではないか、この問いが第2回研究会につながっていきました。

第2回研究会のテーマは「アソビと余白」

第2回Emotional Well-Being研究会 実施レポート アソビと余白から見るWell-Being

ゲームをしたり野山を歩いたり、遊ぶことは心身のリフレッシュに役立つ楽しみですが、熱中しすぎると余裕がなくなりストレスを感じるかもしれません。そこで、「余力や余白という意味でのアソビ、そして文字通りの楽しむための遊びの両方が、人がWell-Beingであるために重要なのではないか」という観点をひとつの軸にして、「アソビと余白から見るWell-Being」をテーマに第2回の研究会を実施しました。国際マラソン・ディスタンスレース協会の理事で中京大学においても社会学の教鞭をとられる岡村徹也先生と立命館大学でゲーム研究をされている井上明人先生に、ご講演いただきました。また、その後に、豊田中央研究所の小島部門長、トヨタの河村ユニット長が加わり、パネルディスカッションを行いました。その研究会の内容を紹介いたします。

私たち一人ひとりが「Well-Being空間」の生産者

岡村徹也先生 Well-Being空間の生産に向けて

岡村先生は、「Well-Being空間の生産に向けて」と題して、ご自身が主に事業開発やイベントづくりで得た知見を足掛かりにして、どのような視点を持って、Well-Beingな空間をつくるのか、成し遂げるのかについてお話をいただきました。

岡村先生はマラソンなどのイベントづくりにおいて、その場所でしかできない「体験」、みる人も含めた「参加」、そしてプロジェクトを通して成長する「仲間」と言ったキーワードを大切にしているとのことです。そして、それぞれのキーワードを実践する時、必ず「いまここ」という意識を持つことに注意を払うといいます。するとそこに「生」を感じ、「心よろこぶ」瞬間に焦点が定まります。「人がいきる空間」づくりこそが大事なことで、創造力と発想力の向上までも期待できると指摘します。

Well-Being空間は設計者の働きだけで完成するわけではないと岡村先生は指摘します。社会学において、空間の在り方がそこに存在する人びとの空間との関わり方によって変化するという考え方があります。空間自体がオープンで変容可能である(アソビ、余白がある)ことを前提に、その場の参加者が提供された空間を受け取るだけでなく、能動的に「変革」していこうとする気持ちを持つことが大事だと岡村先生は説きます。

変化しつづける社会状況においては新しい困難やストレス状態が生まれます。そのとき、創造力や発想力など、起こり得るさまざまな「困難」に挑戦して乗り越えていく力が、Well-Being空間づくりに重要であり、私たち一人ひとりが「Well-Being空間」の生産者であることを忘れてはならないと、講演を締めくくられました。

世界を遊びに満ちたものにできないか?

井上明人先生 世界を遊びに満ちたものにできないか?

ゲームの研究者でもありご自身でもゲームを作られている井上先生は、遊びやゲームと社会との関わりについて、歴史的な背景からお話を始められました。遊びやゲームを社会的にどのように位置づけるのかは紀元前から考えられ、「遊びはよくないもの」として捉えられてきた側面もあります。それでは楽しみと仕事は別々の質のものなのでしょうか。井上先生は、遊びは仕事や学びと連続的な概念であり、例えば狩猟民族は遊びながら生きる術(すべ)を学ぶということを例示しました。現代社会では勉強がある領域に区切られているなど、遊びの位置づけは社会によって変動し、揺らぎやすいものであると指摘します。さらに、スポーツを例にして、真剣に取り組む楽しさも、真剣さを求めず息抜きで行う楽しさの、どちらもあり、遊びという行為への向き合い方にもバリエーションがあると述べられました。

ところで、人はどのような遊びにハマる(熱中する)のでしょうか。遊びの中で「環境への適応」と「創造的行為や逸脱」が循環することでハマるのだと井上先生は説明しました。多くのビデオゲームで段階的に習熟できるようにステージが設計されているように、連続性のある行為を多様に展開させていくことがゲームを考える基礎となるそうです。

日常生活にゲーム要素を取り入れるゲーミフィケーションでは最近、電気メーターを把握して高い節電効果を達成するアプリが盛り上がったり、コロナ禍で散歩をするだけの動画が世界中で流行したりするなど、日常生活を記録したものを遊びに転用する試みが増えてきています。IT技術の広がりで日常空間の定量化が容易となり、その定量化により日常生活と遊びが融合しやすくなってきている現状をご紹介いただきました。

アソビはWell-Beingを育むゆりかご

上段 : 井上先生(左)、岡村先生(中央)、小島(右)下段 : トヨタ 山口(左、ファシリテーター)、河村(右)
上段 : 井上先生(左)、岡村先生(中央)、小島(右)
下段 : トヨタ 山口(左、ファシリテーター)、河村(右)

パネルディスカッションの冒頭で、豊田中央研究所で先端研究を担当する小島部門長は、イベントでは人気のものだけをやっていても新しい発見はない、新しいことをしなければ次に進めないという岡村先生の言葉に勇気づけられたと感想を述べられました。岡村先生は、遊びは人が生きる空間で大切なものであり、企業においても「アソビ」は(ゲームだけでなく、摩擦を防ぐクッションとしても)Well-Beingを育むゆりかごになると述べられました。これに対して、井上先生は建築家の青木淳先生の著書にある「原っぱと遊園地」という言葉を紹介し、多くの方に楽しんでもらうようなゲームはしっかり楽しむポイントを設計された「遊園地」であり、岡村先生のお話しされた「Well-Being空間」はいかようにでも使える「原っぱ」であって、多様性のゆりかごになっていると解釈でき、それが重要な観点であるとコメントされました。

トヨタで基盤研究を担当する河村ユニット長からは、価値観の多様化がゲーミフィケーションにどのような影響を与えているか、との質問がありました。井上先生は、ユーザーと一緒に実空間をゲームの場として多様な価値をつけていく、それに伴ってユーザーの実空間への見方がかわっていく、これがゲーミフィケーションの重要なポイントではないかと述べられました。これは岡村先生の「私たち一人ひとりが『Well-Being空間』の生産者である」という言葉につながります。さらに、ユーザーは設計者の想像を超えた使い方をすることがある、そうした使い方ができるように許容し、どのように使われたかを次の開発に活かすことが大事であると、岡村先生は指摘されました。

次回に向けて

「アソビと余白」というテーマに対し、岡村先生はイベント、井上先生はゲームという視点でWell-Beingについて拡がりのある議論を展開していただきました。多くの人が楽しめるイベントやゲームには、多様なお客様が能動的に関わることができる余白があり、お客様が創造力や発想力を使ってそこで起きる困難を乗り越えることでイベントやゲームがもっと面白いものになる、それに参加する人がもっとWell-Beingになる、という共通の構造が見えてきました。そこから「アソビは多様性とWell-Bingを育むゆりかご」というキーワードが見えてきました。

今後も、多くの方とこうしたディスカッションを続けていきながら、現在そして未来の社会で暮らす人びとのWell-Beingのためにトヨタは何ができるのかを、考えていきたいと思います。引き続きEmotional Well-Being研究会の活動にご期待ください。

本件に関するお問い合わせ先

未来創生センター
メールアドレスxr-probot@mail.toyota.co.jp

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